2007年09月23日
紀伊国屋ホール
柳家三三 「お富与三郎 木更津」
※柳亭市馬が与話情浮名横櫛四段目(源氏店)の与三郎のセリフを語る
立川談春 「お富与三郎 稲荷堀」
※柳亭市馬が「お富さん」を歌う
立川志の輔 「バールのようなもの」
柳亭市馬 「子別れ(通し)」
■お富与三郎 木更津
「今日はこんなに沢山、SWAのチケットが手に入っていない人々が来て下さり(略)」から始まる。
きくおネタを話すのに、「安倍元総理は船徳の若旦那」ネタから入り、「タカっぽい過激な事を言っても滑舌の悪さでマイルドになる、、、人徳ですね。人徳と一緒ですよ、きくおと一緒。」で一気に移る無理やりな力技がおかしい。タネと仕掛けが丸見えの三三イリュージョン。
襲名披露では、父と同じマクラだったりプレッシャーを物ともせずに「楽しいパーティが出来ました」と挨拶したり、兎も角きくおは眩しい。襲名披露の話をしているのに木久蔵では無く「きくお」と呼ぶ三三だが、目をすがめてきくおを眺めている。
ちなみに、引き出物は木久蔵ラーメンと木久扇のイラスト付きの丼と(何故か)蜂蜜2瓶だったそうです。「翌日、おびただしい数の丼がヤフオクに、、、」はお約束。
落語のお富与三郎は始めて聞いたけれど、生々しい話ですねぇ。
芝居では簀巻きにされ海に放り込まれるところを、「強請りの種」として瀕死の与三郎が伊豆屋へ運び込まれる展開になっているんですねぇ。落語の工夫も素晴らしいなぁ。
ところで見染の場面で、与三郎を見たお富の様子を「与三郎に向かってニコと笑う」と言っていたんですが、これ、どうもお富に合わないような、、、。
でも、芝居でも滅多にお目にかかれない「赤間別荘の場」を落語で聴けて儲けた気分。
三三の赤間源左衛門がよかった。名のある親分ではあるが、女に狂って威厳が剥がれている様子がうまい。
■与話情浮名横櫛 四段目の名台詞
最近、とみに市馬の「人の悪さ」が面白い。
人の悪さと言っても、懐かしの遠藤周作狐狸庵シリーズの"茶目っ気"に似た人の悪さだ。
名調子にうなるも(いや、これがまた、声がいいんだ。声が。間は詰まっていたが、声がいい。お富ほどの女が惚れる男の声だ、と納得させられてしまう声なんだ。)、落語の合間に芝居の名セリフを挟む趣向の本意は何だろう。だから趣向でしょ、、、と言われればそれまでなんだが。
なんと言うか、三三目当ての客や談春目当ての客を試しているような、そんな視線を少し感じる。いや、考えすぎなのは分かっているんだけどね。
まぁ、落語は落語、芝居は芝居と分かっていれば、とても素晴らしい趣向。
■お富与三郎 稲荷堀
三三の名前のままのめくりを見てキョトン顔の談春。
市馬の与三郎を評して、「与三郎と言うより、馬三郎ですね」
談春の言葉の的確さに、ハッとする事が多い。
「百両の金はすぐに
解けちまう」
「お前さんの前だが、
程のいい女だ」
ただ、お富も与三郎も美しく無い。これはワザとなんだろうか。ヤケに汚い。
方や昔は今業平と呼ばれた男、方や洗い髪で座敷に上がっても咎められない売れっ子芸者だった女。、、にしては汚い。了見が汚れてしまった人間性を表しているんだろうか。深いなぁ。
富八を、罵りながら逆手に持った包丁で急所を刺し、血糊を富八の着物で拭う、、、この様子は綺麗な女よりも、死人から剥ぎ取る羅生門のババァに近い。
ところで、「富八から、せしめた5両だ(正しくは奥州屋)」だの「それじゃあ与太さん」などはわたくしの聞き間違いでしょうか。与三郎を与太さんて。あんちゃーんあんちゃーん。
そして、「お富さん」のイントロが流れ出し、下手を見て苦笑いの談春。
■お富さん
さぁ、お待ちかねの市馬昭和歌謡ショー。高らかに「お富さん」を歌う。
「わたしは一体なんなんでしょう」
「さぁ、もう一番あります」
春日八郎のようなしみる笑顔で歌う市馬。かなわない。
■バールのようなもの
左手で扇子を持ち、空いた右手で鼻をプーンとはじきながらの登場。
最近志の輔が高座にあがる度に、鼻をプーン鼻をプーンスナップきかせて鼻をプーン♪が頭に流れて消えない。そんなあんたの鼻をプーン♪
座った途端に「舟の中の蝙蝠安に見られました与三郎は、、、」と始め、客席に軽いどよめきが。しかし「、、、後は覚えていません。」
うはは。そんなあんたの鼻をプーン♪
続いてのマクラは"ニュースに上らない面白い話"。人里に熊が出るので捕獲器を仕掛けてみたら掴まったのは人だったと云う締まらない話。好奇心は猫をも殺すのです。
後は、夏のストーブ・エイヒレと深爪・ライオンと檻などなど、屁理屈小話でじわりじわりとバールのようなものワールドへ。小話の中の蚊の話の「かね」「金?」「いや、蚊、ね」「か、ね?」「ぷーん、の蚊、ね」の辺り、マルクス兄弟の掛け合いみたいですごく好き。
続きはまた後で加筆しますわい。