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。はにかむ



【落語】第3回 東西笑いの喬演 柳家喬太郎・笑福亭三喬東西二人会


2007年09月12日
国立演芸場

笑福亭三喬 「近日息子」
柳家喬太郎 「錦の袈裟」
柳家喬太郎 「孫帰る (堀内亮子作)」
笑福亭三喬 「仏師屋盗人」

■近日息子

初めて見る三喬。いい面構え。こんな直感で決めるのもなんだけど、こういう顔の人は話も巧い(はず)。まぁ、アレです。初めてみた競馬新聞で「このお馬さん、速そうな顔してるー」で馬券買ってビギナーズラック引き当てちゃう人の勘は侮れないもんだったりする、アレと同じ。


さて、その期待の三喬の第一声は「皆様、政局不安定な時に起こしいただき、、、」。

いえいえ、政局は不安定でも政治は揺るがないものです(と信じたいですね。僕たち、国民。今日も食べられる。)

そして繁盛亭の様子を語る。名のとおり繁盛しているようで何より何より。
ある日の繁盛亭。真ん中付近に陣取った看護学校(乙女多し)の学生さん達から匂い立つシャンプーのかほり(資生堂ツバキ)と、脇を固めていたジジババのサロンパスのにほひの混ざり具合を「川中島の決戦」になぞらえているところがツボでした。混ざり混ざってサンスターのトニックシャンプーになる、と。

東京と大阪の違いを列挙しつつ、近日息子へ。

落語としては珍しく時代設定がはっきりしており、登場人物が「今年から商業野球が始まって、大阪タイガースを応援する」と話すくだりがある。おそらく1935年。
時代を映す言葉の散らばりようが面白い。電話普及率を物語る「電話を借りる」や、死因にまず挙げるのが「トンコロリ」、「大学病院のえっらい先生」と町医者よりありがたがっている様子など。
ばあさんの丸髷を弾き飛ばしてしまい代わりに「メロンパン」を乗せると言った場面が出てき、首をひねったが、今調べてみたら何とこのメロンパン、明治時代から作られていたと云う説もあるんですねぇ。戦後の食い物だとばかり。

全体的に、少し回転がずれてる感じ。客層を量っているうちに終わってしまったか。
でも、この計測が次の「仏師屋盗人」で活かされる。

他、つれづれ
「ちゃんちゃらおかしい」=「てんぷら食いたい」
ホースもソースも焼けたもんにかける

そうそう、「くすりの博物館」のコレラのページでまとめられている資料が非常に面白いです。

■錦の袈裟

この半月、妙に喬太郎の調子が悪いような気がしていたので、始まる前からハラハラ。
いや、まぁ、別に演者の調子が悪いってワケじゃなくて、わたくしの喬太郎への期待が大きいだけに、色々と誤差を感じてしまうだけなんだろうな。
、、、と云いつつ、今回もなんだか、"何かを読んでるような"話し方をする場面がチラと見える。うーん。わたくしの調子がすこぶる悪いのか。

さておき。

口を開いてまず、「やっと最近、"三喬にいさん"と云う呼び方になれてきました。」
続けてのマクラは、お馴染みの「わびさび萌え」を一頻り話した後、唐突に「客席との距離感が掴み辛い。(膝立ちになって)みんなさー、一つになろうよ。頑張ろうよ。俺は頑張らないけど。」と軽く外した事を云う。火力の調整がいまいち。

でも、呑む打つ買うに縁の無い男の小話、「どこ行く?」「としまえん」は懐かしくて嬉しかった。
なんでも、6代目柳家つば女直伝のくすぐりだそうな。「2つ目すぐに稽古して貰って、上げて貰った思い出の話」と少し脱線して、「リレー落語で、繋がりの余り無いつば女師匠と錦の袈裟をやったことがある。」と云う話も聞ける。

つば女話に脱線した時、ひょいと袖に向き「国立の方。今日も延びると思います。」

ところで、わたくしの隣の席にいたご婦人がとても可愛かった。
「花魁の語源は、男を騙すのに尾がいらんから、尾いらん」になったと話す喬太郎に、『へー』と大仰に感心して見せ、すかさず「嘘に決まってますよ」と付け足すと、『もーぅ、いやん!』とお連れの方の肘あたりを擦るようにつねってました。色っぽいなぁ、奥さん、はぁはぁ。

与太郎は与太では無く、危うさを孕んだ様子。孕んでいるものは狂気でもあり。この、日常と日日常の境界線は命綱の無い綱渡りで、これをすり足でもなくスタスタと歩ききってしまうところが流石は喬太郎。
後朝にふと正気(正気と云うか、目が覚めたように世界を感じている様子)になる与太郎。そして、ふい、とまた与太郎に戻るところなんか、ロバート・デ・ニーロにも見えるから不思議だ(与太郎の朝、、、とでも題名を付けようか)。

他、つれづれ
「秋葉原には色んな国の人が集まるけど、皆、同じオーラ」
「11人いる!」
「女郎を買いに行きましょうブラボー」
「爽やかな朝です」


■孫、帰る

悟空が一家を引き連れて里帰りをする様子を描いた感動作ですね。
玄関のドアを閉めてさぁ惑星べジータに出発と云うところで、「惑星ベジータがフリーザに破壊されていた事を忘れてたぞ」と云うサゲが涙を誘いました。

はーい、嘘です(横たわり、鼻をほじりながら)。

閲覧者との距離感が異様に遠いブログならではのヤンチャっぷりですね。
出てこいやー、出てこいやー(挑発ポーズを取りつつ)

さておき、本当の孫帰る。
マクラはやっぱり、この人「アベシンゾー」ネタ。
「今日は大変な日(安倍退陣)でしたね。涙目でしたね。泣いてるよ、この人(と思いました)。」から始まる。続けての「楽屋に居たら、師匠方に"間が悪いんだよ!"と小言を食らいます。」にお客さん大喜び。

でも、安倍話よりも次の「この夏が暑かったのは、世界中の人工衛星のパラボナが日本に向かったんですよ。とうとう動き出したんですよ、ショッカーか。」が好き。イ゛ー!

後は、子供の頃の思い出。東宝チャンピオンまつり。

そして、孫帰るへ。
タンスの上のおじいちゃんが飛び降りるまでの間に、「着物を裂いて竹に結び付けて、いや、降りるんだから傘を開くか」のセリフが入る愛宕山リミックス。
「なんとかブートキャンプをやろうかと思ったんだが、やってる人に聞いたら水がたまるらしくてな」
などなど。少し、調子が戻ってきた様子の喬太郎。蛇足なセリフが妙に面白い。

定番のタバコの愚痴の中に、「クセの云うのは怖いな、こないだ、こうやってしまった(といいながら、扇子を口に持ってゆき煙管でスパスパと2回3回吸う様子)」と語る。
ちなみに、今回は吸わないタバコはちゃんとスボンの右ポケットに仕舞ってました。うひゃ。

ところで、原作者の方にご連絡付いたんですかねぇ。

他、つれづれ
「いーもんのゴジラ」
「パンダコパンダは、別にパンダの弟子がコパンダって事じゃないですから」
「喋れども喋れどもは、三三君が監修だから見なかったンですけど。嘘ですよ。」


■仏師屋盗人

「シュールな喬太郎さんの後は、くまのプーさんが出てきました」と挨拶。
いや、プーさんと言うか、落語の世界にぴったりの泥棒顔だと思います(知人から聞いた話だと、小佐田定雄もさん喬は泥棒顔だと言ってるらしい)。これは武器ですよ。このお顔で泥棒話とは、やるなぁ。
マクラは、息子の話や、老女宅に入った強盗のニュースの話。
強盗に馬乗りにされた老女の「目的は金か?」と云うセリフは天晴れだが、それに返した強盗の「それしかないやろ!」も見事だ。ちなみに老女は80代で強盗は70代。

さておき、仏師屋盗人。
初めて聞く話だけど、鳴り物で鐘がゴーンと鳴ったり、「封印切」や「伽羅先代萩」などの芝居の話が入るのも楽しい。「腹が減ってもひもじいない。盗人さん、こわいーこわいー(袂に顔を隠しながら)」

泥棒がまた愛嬌たっぷりで、仏師に向かって「おきてー、おきてー」を連呼するところなんか、もう、キュート。

膠を剥がす仕草が面白かったなぁ。付いてしまった膠は、のみでこそげ落とすのか。なるほどなぁ。カスを吹く様子もなるほど。

他、つれづれ
「(喬太郎さんを民謡に例えると)民謡でもロシア民謡」
by bithoney | 2007-09-13 14:01 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜
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