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。はにかむ



備忘:


 『落語寄席風俗誌』 正蔵・寿山共著  展望社  より抜粋


 芸人の妻として、下っ葉(原文まま)の貧乏時代から連れ添って、苦楽をともにしながら、夫を一人前にしてきた老妻たちのうちには、芸のこと、人生のことについて一家言をもつ老女が少なくない。
 円朝大師の弟子一朝がまだ円楽を名乗っていたころのこと、一時彼と夫婦生活をしていた女性で、別れてのちは、円右の下座をしていた長唄のしっかりしていた芸人で、男刈り髪をしていたおばあさんが、あるとき、

 「あの、おまい、噺を習うなら、円楽じじいのところへおいで。少うし皮肉で、変り者だけれども、噺はよく知っているるよ。それで、あの人ァ真打になったことがあるんだから。--真打になったことのない人に噺を教わるってぇと、噺がちぢかんじゃって、のんびりしないから。あすこへおいで。」

 これが縁で、私と一朝老人の長い間のかかわりができたのである。

 「あたしが幸せだったことは、一朝老人に噺を稽古してもらったことです。」





 ここで云う私とは、無論正蔵。若き日の正蔵。

いや、しかし、 「噺がちぢかんじゃって、のんびりしない」の鋭さったら無い。
by bithoney | 2009-06-20 16:33 | 六角亭日乗
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泣くが嫌さに笑い候。

by bithoney
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