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【落語】第58回 柳家小三治独演会


2007年05月31日
鈴本演芸場

柳家ろべえ 「元犬」
柳家喜多八 「おすわどん」
柳家小三治 「小言幸兵衛」
柳亭燕路 「だくだく」
柳家小三治 「お茶汲み」

■元犬

ご挨拶代わりに名前の由来。
「お客様から野次がかかって初めてやじろべえになります」の自己紹介が終わり元犬に入ると共に、無意識に羽織の紐を解くろべえ。
「あれ?」と声を出し、暫し固まったかと思うと、照れ笑いを浮かべながら徐に紐を結びなおす。

この失敗が愛嬌に。
噺が進み、「裸じゃ困るだろ。私の羽織を貸してあげる。」と口入屋の旦那さんがシロに語りかけるシーンで、ようやく羽織の紐に手が掛かると客席から優しい笑いが起こる。

この笑いが、気持ちよかった。
ろべえの人柄の良さもあるんだろうけれど、何より、お客さんが温かさを感じる。
今日のお客さん、いい感じですよ。この人たちと笑いを共有できるのは嬉しいなあ。

しかし、この暖かさとはかけ離れているのだけれど、ろべえの元犬は後味がどこか気持ち悪いように思えた。

何故気持ち悪いのか、、と思い返すと、ただ単に「お元さん」が出てこないだけなんですよ。

ご隠居が、まるで一人で暮らしているような噺の流れ。たった一言、ご隠居が「お元は今、使いに出ていて」と云えば、腑に落ちるんですが。

いや、だってね、お元さんが存在しないまま噺を進めてしまうと、口入屋に「変わっていて面白い人」を頼み、やって来たシロを受け入れたご隠居の本心が掴みかねるんです。身の回りを世話する人間をさて置いて、道化者を求める意味を考えてしまう。

大事なんだなあ、お元さんの存在って。

■おすわどん

「しらふの一日は長い」
何処か深いセリフを吐く喜多八。

妻と妾の話。
夜な夜な、「おすわどん」と自分を呼ぶ声が聞こえる、と妾は旦那に訴える。
これは、死んだ奥様が恨みに化けて出ているに違いないと怯える妾。
そこで腕に覚えのある剣術指南を雇って声の主を探らせたところ、蕎麦屋の「蕎麦饂飩」と言う掛け声を「おすわどん(おそばうどん)」と聞こえていただけだった。
、、、とまあ、まとめると拍子抜けするほどの話だけれど、人の心を思うとなかなかに暗い噺。

サゲ
私(蕎麦屋)の息子ですと渡された蕎麦粉"子"を眺め、これをどうするのだと問う剣術の先生に向って
「手打ちになさいませ」と答える蕎麦屋

ちなみに剣術指南役の名前は「こおりやまたけぞう(郡山剛蔵)」
でも歌いません。

■小言幸兵衛

「えー、、、特にお話したいことは無いのですが、、、」の第一声から長いマクラへ。長いぞ。

このマクラの主題は2つ。
それぞれにタイトルを付けるとしたら、ひとつは「時差とハワイとハルシオンと」か?僕とカエルと学校と。
そしてもうひとつは「青葉の笛(敦盛)」。

ハワイの話は、「ハワイの時差にどうにも馴染めない」と言った愚痴と体験談。
ヨーロッパほど時差が開いている方が苦にならず、ハワイのように微妙な時間差が小三治には辛いらしい。「我慢して遅くまで起きているのはいいが、我慢して早く寝るのは辛いでしょー」と的を射ているのかはずしているのか、人を食ったような喩え方をする。

20年前に俳句会でハワイに行った時、この時差にひどく梃子摺ったので、後に娘とハワイに行ったときはこの眠気を逆手に取り、機上する前にハルシオンを服用してみたそうな。

しかし、その用量がいけなかった。
日頃は四半分に分けたその1欠片を服用しているのに、その時は1粒半をいっきに飲み下した。この6倍の量は効果覿面で、機内では寝っぱなし。ハワイに着いても、夢か現かの状態が続く。

それどころか、帰国してからもどうにも体の調子が戻らない。頭がやたらとボンヤリしてしまったそうな。
帰国して間もなく浅草で「茶の湯」をやったが「根岸」と云う地名が思い出せない。致し方なく「隠居にいいところが見つかりました、、、場所はねえ、、、あそこなんですよ」と「あそこ」で誤魔化す。

ちなみに、「根岸の里」と云う言葉は俳句を作るにはとても便利な言葉で、何にでも「根岸の里の侘び住まい」で〆れば、いい句に聞こえる、、、と小三治。

ちょっと、作ってみよう

 「チリ人妻、根岸の里の侘び住まい」
あ、本当だ。とても慎ましく暮らしているようないい絵が浮かぶ。

 「北斗神拳、根岸の里の侘び住まい」
あ、本当だ。閑静な里に響くアベシ!と云う悲鳴もなかなかにオツだ。

 「風船おじさん、根岸の里の侘び住まい」無事だったんか。
 「三角コーナー、根岸の里の侘び住まい」レタス腐ってる。
 「ビリーズブートキャンプ、根岸の里の侘び住まい」痩せそうにない。
 「シェフのきまぐれサラダ、根岸の里の侘び住まい」雑草。
 「こんなになっちゃったよ、根岸の里の侘び住まい」何してるんだ。

なるほど小三治の云うとおりだ。「根岸の里の侘び住まい」お勧めです。使わなくちゃバカ(おすぎ風)。

ともかく、この「根岸の里」を思い出せず、苦し紛れに「あそこ」と言ったことがきっかけで「呪縛が解けた」と云う小三治。「俺は知らなくてもいいんだ、、、と悟った」と続ける。
上手くやろうとしていた肩の力が抜けた、、、と話をまとめるところが「呪縛」だと思うのだけど、それはそれ。これはこれ。だけど、ちょっとだけ、向田邦子のエッセイを思い出した。あの一つ一つが綺麗に落ちている話の数々。向田には向田の呪縛があり、小三治のマクラにはマクラの呪縛がある。

ハワイの話はこれくらい。続きましては敦盛の話。(どうだ、長いだろ。まだ小言幸兵衛に入らないんだぜ)

敦盛と言われると、芝居や文楽の熊谷陣屋や、能の敦盛を思い出す人も多かろうが、小三治が話題にした敦盛は明治時代の小学唱歌「青葉の笛(敦盛と忠度)」の敦盛。
無法松の一生で子供が歌っていたそうな。(覚えてないなあ、、、しかも坂妻の無法松だって、坂妻!嬉しいじゃないか。)

と、まあ、長いマクラだったワケですよ。
寄席の狭い椅子で聞くよりも、日当たりのいい縁側に新聞広げて足の爪をパチンパチン切りながら(ここは、いわゆる爪きりじゃなくて裁縫で使う握り鋏がいいね)聞きたいなぁ。

そしてようやく小言幸兵衛。
プロローグが秀逸。玄関先に出て、家の目の前で孫に小便させているバーさんに小言。目線を少し上げ、井戸端でワタを散らかす魚屋を見つけ小言。そのまま視線を通りまで移し、2匹でつるむ犬に「他所の町内でつるめ!」と小言。それで満足したかと思えば、家に入って奥さんに連続小言。いい人物描写だな。ダイコンの花あたりの森繁久彌にこれらのセリフを云って貰いたい。

 他、つれづれ
「カメハメハ 椰子の木陰でハメハメハ」
「あれ(小三治の落語研究会のDVD集)はハッキリ云ってオススメできない」
バーさんへの小言1「くるくる回って北でピタリと止まる磁石婆め」
バーさんへの小言2「慌てるな。新撰組が飛び込んできたんじゃあるめいし」
小言をかわすバーさんの知恵「それじゃ、おじいさんのお腹が停車場になる」
豆腐屋夫婦の馴れ初めで「お前さんみたいな人に賽の目にされたいわー」
息子の名前は鬼塚セコ左衛門

■だくだく

「夜もだいぶ更けて参りました」の第一声で笑いをさらう。時間を見たら20:35だった。
続けて、小三治の話の長さを新幹線の乗車時間に例え「名古屋はとっくに過ぎて、そろそろ京都へ着く頃です」
うまいなあ。

百円札がぎっしり書かれた金庫。「透かしはいりません」と先生に言う。
百円札って透かしが入ってるのか、すごいな日本の印刷技術は。

■茶汲み

「私は何かにつけて奥手でして」と言い訳じみた事を言い出し、柳家小里んと柳亭小燕枝とで風俗へ行った話しを続ける。

「あれはたしか、、、"大奥"って店でした」

何度か通い、また足が向った矢先、なにやら店先が騒がしい。様子を見ていると、警察の手入れが入ったようだと気づく。ぞろぞろと店の関係者が出てくる中、最後に一人ぼんやりと講談師の田辺一鶴が店から出てきたところまで。あの髭で寄る辺無い顔をしてたかと思うと気の毒やら笑える。

ここまで聞いたらお腹いっぱい。
この後で聞く茶汲みはいい塩梅。最後の一服に塩こぶが付いた程のよさ。

途中「マクラなんかどうでもいいから先行けよ。マクラの長い噺家にロクな者がねえよ」のセリフ付き。これが塩こぶ。
ちなみに店の名前は「安大黒」。ひたすら安っぽい。


うーん、すごいボリュームでしたね。
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by bithoney | 2007-05-31 22:32 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【落語】我らの高田笑学校 ~しょの28~


2007年05月30日
紀伊國屋サザンシアター

立川志ららからのおねがい
三遊亭白鳥 「双蝶々~メルヘンの森の長吉」
立川志らく 「親子酒」
林家彦いち 「掛け声指南」
立川談春 「鹿政談」
五人揃って誤認ジャー(嘘)

立川 VS SWAなんだと。
後でゆっくり加筆しますが、取り急ぎこの対決をまとめますれば今週号の「週刊マガジン」と「週刊サンデー」に要約。

緻密な計算で「赤ちゃんポストに大人が入ってます!」と描いた『さよなら絶望先生』の久米田康治を立川だとしようじゃないか。
だとすればSWAは、計算は無いのにたまたまこのタイミングと合ってしまった「わたしは農水大臣推薦のなんとか還元水しか口にしませんもの」の井上和郎の『あいこら』。
SWAというか、白鳥というか。さくら水産万歳。


■志らら

噺をするのではなく、前説代わり。
高田センセイが一番乗りした楽屋のダレダレムードや、異様に客席の明るさに注文をつける白鳥の拘りや、なぜが談春と志らくが小競り合いをしていた様子をレポートして、とっとと下がる。

■双蝶々

「今回の立川 VS SWA は、北朝鮮とアメリカのようなものだ」とか、「私は円生の直系ですから」で客の食い付きを様子みる白鳥。「円朝といえば、有名な話が沢山ありますよ。芝浜とか芝浜とは芝浜とか」

そこから突然「双蝶々やります」宣言に軽くどよめく客席。

、、、期待したアタイがバカだったよ。
本気で円朝の双蝶々をやるのかと油断していた矢先に「ラブリーちゅー」「カッパの国の王子様」を放射されて、わたくし半死半生です。

でもね、ふと思ったんだけど、円朝の双蝶々を初めて聞いた当時の人たちの中にも同じようなガッカリ感が漂ったかもしれない。だって、芝居の双蝶々曲輪日記と落語の双蝶々とでは大違いだもの。
むしろ、日頃の実験的(?)な落語スタイルを知っている白鳥の方が傷が浅いかも。

少しつっこんだ話をすれば、、、
図書館司書の立場から見ると、「白鳥は卑怯」だと思う。
「童話」に沈んだ澱を知っていながら、かわいいおとぎ話をかわいいキャラクターで誤魔化しているのが残念。もっと、人間の業も見せて欲しい。素知らぬ顔して表面的にはメルヘンとして話し、人の心に何かしらの「種」を残すのが童話を語る者の使命だと思う。
白鳥なら見せてくれると思うんだけどなあ。何を迷っているのか。

■親子酒

口を開いてまず「双蝶々をやるって云うから最後まで聞いちゃって悔しい」

そんな事云ったら、志らくの双蝶々もラストもなかなか裏切ってくれたけれどなあ。
最後に2匹の蝶々を飛ばして幻想的に終わらせていたけれど、あれは、どうも「蝶の道行」を彷彿とさせて空しい。助国と小槇のように、あの世で業火に焼かれる親子を想像してしまうもんなあ。手妻の「蝶のたはむれ」をイメージしてたとしても、無常観はぬぐえない。
いや、志らくは別にハッピーエンドを想定して話しているワケじゃないだろうけれど。

さておき、親子酒。

馬生がマクラ。
馬生、最後の高座の「船徳」を聞き「お前は落語をやれ」と啓示(電波)を受けた志らく青年は、弟子入りするなら馬生とまで思うが、時は既に遅し、この何日か後に馬生は亡くなる。
馬生の葬儀に一張羅(ズボンのチャックは壊れて閉まらないが)で駆けつけ古今亭志ん駒の口利きで焼香をあげることができた。その帰り、ふと立ち寄った寄席で談志の高座を見る。
噺もせずに、つれづれに馬生の思い出噺をする談志。客からの野次に対し「すまないね。今日は落語する気になれない」と謝る姿に、談志への弟子入りを決意した。
と、まあ、こんなところ。

親子酒は程がいい。
どえらい盛り付けの前菜を出された後に、胃にやさしい汁物を出してくる志らく。目の読み方が大人だ。
自分が死んだ姿を想像して泣いたり、連れ合いに向かって「トンチばーさん」を連呼したりする大袈裟なそぶりも、何故だか落ち着いて見えるのは白鳥マジックか。ところどころに挟み込まれた志ん朝や志の輔の物真似も古典に見えるから不思議だ(大袈裟ですよ、中島さん)

ところで、この家の食器棚には、「お前はいったい何なんだ」と言いたくなるような浮かれた中国人の子供が描かれた湯のみや、歴代の総理の似顔絵が描かれている湯のみや、寿司屋で貰った魚編湯のみが置いてある。
大店にしては器の吟味がされていなくて、なかなか気さくで下世話なカンジ。これも繁盛の秘訣なんだろうか。

他、つれづれ
 「松岡が自殺した。立川企画!」
 「談志はうまく踊れない」「そんなことないよ」

■掛け声指南

「ボクは白鳥さんを全然信用していない」
から始まった白鳥エピソード。

白鳥とミクロネシアへ旅した時の鬼畜エピソード。
ヒッチハイクした車が悪い了見を起こし、そのまま密林まで連れ込まれ身包みはがされそうになったが、「彦いち、戦うぞ!」と云う白鳥の力強い言葉を聞き、奮い立つ彦いち。
ところが、白鳥は彦いちの背後に回ったかと思うと、ギャングに向かって彦いちの背中を力強く押すと云った信じられない裏切りをしでかす。
何とか無事に済んだが、後で「なんでそんなことをしたんですか!」と責める彦いちに「我慢できなかったんだ」。

他、白鳥語録。
・玉之輔宅に赤ちゃんが生まれ、「アニさんどっちが生まれた?大人?」、、、大人?
・自慢話の時。「俺さあ、Jウェーブからリスナーやらないかって誘われてるんだ」

今日の楽屋から、出番の終わった白鳥語録
・「彦いち、今日ね、古典の客だから!」
・「客は、(今日のメルヘンの森を)円朝作だと思ってるよ」

本編は、よりタイ人の孤独感が増した感じ。
前に聞いた時は「お前の声が好きだから、セコンドで応援してくれよ」と声をかけてくれた選手も、今回はなぜか淡々としている。
全体的に乾燥気味で、それが却ってタイ人を浮き上がらせてよかった。
サゲは変わらず「高島屋ー、阪急ー、、、KO! 検討(拳闘)違いをしてました」

■鹿政談

「奈良三条横町に」と話し始めたかと思うと
「、、、、、、いひひひひひ。紋付袴を穿いて来た俺が悪いみたいじゃないか」
続けて楽屋での志らくと白鳥の様子を伝える

白鳥 「俺たちこんなに仲良しなのにネエ~」
志らく「ネエ~」

で、ようやく鹿政談。
時間が押しているのか、妙に説明的だなあ、、、と思っていたらネタおろしだそうな。しかも、さっき楽屋で覚えたばかりだと云う。
なるほど、消化される前に吐露されるものはこんなに固形物なんだな。

でも、談春なら、たとえ未消化で吐き出したものでも「旨い」と思って喰える。

■文夫校長のお話

志らく。談春。高田文夫(故笹川会長のようないでたち)。白鳥。彦いち、の順に並んで座談会、、、と云うか「白鳥サンを語ろう会」

つい、さっきも、鹿政談をやってる談春を指差し、「談春のやってる噺は何ですか?犬殺し?」と尋ねただの、犬鹿蝶のあたりで「ねえ、これ、いつ終わるの?」と水注したりと、大活躍。

その上、学生時代の変態(変態と云うよりは、いたずらレベルだが)エピソードを暴露される

。校内の女子便所のトイレットペーパーを水で濡らして胡椒をかけた。
 (女性の悲鳴を聞きたかったらしい)
。剣道部の女子の胴着を盗み、着衣して走り回る。
 (なぜ、胴着なんだろう.蒸れた体臭が好きなんだろうか?)

白鳥はともかく、高田文夫が志らくの落語を称して言った
「そうか、志らくの噺は"大相撲ダイジェスト"なんだ!」
に膝を打つ.なるほどなあ.確かに。

そして最後に高田文夫校長が、SWAと立川流の対決の行方を告げる。

  文夫校長「勝者、、、円楽党!」

うーむ、、、高田文夫ってつくづくすごい人だなあ.
全てを洒落にしてしまうこの感覚が、カッコいい。こういう大人って好きだ。なかなか出来るもんじゃない。明治の洒落人のようだ.

 他、つれづれ
・「昇太はカミカミ王子って呼ばれてる」
・談春「俺がSWA褒めてるのに、台無しにするな」
・「でも、ガテンは捏造でしょう?」
・志らくの携帯に談春から着信13回(ライ坊ショック)
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by bithoney | 2007-05-30 23:15 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【落語】喜多八膝栗毛 春之巻


2007年05月29日
博品館劇場

柳家ろべえ 「たらちね」
柳家喜多八 「粗忽の釘」
太田そのと松本優子の唄と三味線
柳家喜多八 「子別れ」


喜多八を見た人は、まず、あのけだるそうな登場を話題にするのでは無いだろうか。

歌舞伎の花道、いや、能の橋掛かりを連想させる。
あの世とこの世を結ぶものが橋掛かりらしいが、花道にしろ橋掛かりにしろ、わたくしには「進化」を思わせてならない。バクテリアが人の形となる、その過程があの「道」にあるのではないか、と。

喜多八に話を戻すと、彼の橋掛かりを歩いているようなあの登場は、陸にあがった両生類を彷彿させる。ぐだぐだと歩く姿が悠然と身をくねらせて水陸を進む姿に見え、見るにつれなにやら感慨深い。

さておき、噺。

■たらちね

座布団に座り「圧倒されますね」と破顔一笑。つられて笑うお客さんたち。

マクラは、師匠が東海道中膝栗毛の喜多さんなので、それにあやかりコンビのやじろべえを名乗ろうかと思ったが、半人前なので”やじ”を取って”ろべえ”にした、、、と云う名の由来を自己紹介に。「お客さんから野次が飛ぶと、一人前のやじろべえになります。」

東京農工大出身のろべえ。大師匠から「物理を落語に活かせ」と言われ、物理落語に再び挑戦。

登場人物
 その1:ハミルトンさん。略して八っつぁん。
 その2:ご隠居さん(大家さん)
 その3:会話に加わるワケでは無いが、話題の1つとして登場する、店子のニュートンさん

  「ご隠居さん」
「なんだい、ハミルトン君」
  「いやだな、そこは詰めてくださいよ」
「なんだい、八っつぁん」
  「大発見をしたんです」
「何を見つけたんだい?」
  「万有引力を発見したんですよ!」

ウロ覚えですが、こんな出だし。しかし、すごい展開だ。これをだらりbだらりと話すろべえに、大物の予感が匂います。オチで、八っつぁんが八百屋になって遺伝子組み換え野菜を作りたいと言い出す始末。

そして、最後に寄席の踊り「シュレディンガー音頭」でしめる(嘘です。踊ってません。)


「師匠(喜多八)からは、新作はあと10年はやるな、、、と言われています。」

(わたくしとしては)このマクラで大満足だったりするのですが、たらちねもなかなか興味深いものだったので、ついでにレポート(ついでって)

清さんの名前の口上が新鮮だった。受胎告知も、丹頂の夢ではなく梅の枝が胸にささる(香る)Ver。
清さんは大家さんの奥さんの遠縁で、そして父親は大和の侍と云う設定。
珍しいと感じたけれど、寄席通いが趣味の方には御馴染なんでしょうかねえ。

■粗忽の釘

「夕べ呑み過ぎました」から始まる。「難しく考えてもしょうがないから呑む」んですと。酒呑むのに理由はいらないが、言い訳は必要ってことですかね。

日本ひきこもり協会(仮)の出演日を忘れていて、当日に日本ひきこもり協会(仮)から電話がかかってきた話に続く。「芸協の会長が繋いでおいてくれました。」

その話の後で粗忽の釘。「そそっかしいのは罪が無くていい」と始めるとぼけっぷりがいい。

箪笥に火鉢に裁縫箱と、みるみる積み上げて風呂敷で包んだ結び目を直す仕種が細かくて、お客さんが沸く。こういうのを共感できるお客さんばかりで嬉しい。

粗忽者のクセに妙な細かさのある男で、この結び目の直しようも細かいけれど、お向こうの家に行って間違いだと気づいた後に一度家に戻って来る気性を見ると、粗忽に隠れているけれどなかなか繊細で真面目な人なんだなあ、、、と思う。
と、思いきや、刻み煙草と煙管を人様から借りていたりする。繊細な人は、自分の好きなものに固執したりするけれど、やっぱり粗忽者らしいおおらかさ。

ところで、隣の住人に惚気る場面で、「てへ」と舌をペロっと出す喜多八がたまらない風情でした。ご婦人にはたまらない風情。ご婦人にはたまらない風情。ご婦人には、って繰り返すこと無いか。

それにしても、股間から9ギガ(すげえ、うちのパソコンの辞書ったら"くぎが"を変換すると、"釘が"を差し置いて"9ギガ"って変換するぜ!何のために?)もとい、釘が飛び出す阿弥陀さまの絵はすごいなあ。
「阿弥陀さま、威勢がいいですなあ」
いや、まったく。

■太田そのと松本優子

「神田祭り」
そんな季節かあ。遠目だったので勘違いかもしれないけれど、高座返しに出てきたろべえが神田結びをしていたような気がする。

■子別れ

「さらう気がしない」とはまたご挨拶な。うははー。
「だって(現代は)吉原無いんだもの」で上を飛ばす。

熊さんがなかなかにダメ男。

改心した後もダメさは変わらず。
カメちゃんを見かけても通りすがろうとして番頭さんに「逃げるのかい?カメちゃんに会っておあげよ」と諭さる。
鰻屋の2階に上がってきた元女房の顔を見ていたたまれなくなって帰ろうとすれば、カメちゃんにすかさず「逃げるなよ」と云われて、ようやく向き合う。

喜多八の熊さんはなかなかリアル。そう人間、性根が変わるもんじゃない。

かと思えば、達観しているカメちゃんのセリフが一つ一つ物悲しい。

金持ちの坊ちゃんにいじめられた話をする時も、こんな物言いをする。
「どうせ無理だろうと思ったけれど」
「3辺に2辺は負けてやる」
「付き合いとはそういうもんだ」

サゲの一言も、どこか、覚めていて

「かすがい、、、へへへ、ゲンノウでぶたれちまうや」

だからゲンノウでぶつって言ったんだ!と比べると、どうだろう、この乾き方は。
かと言って、ヒネたガキと云うワケでもなく。
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by bithoney | 2007-05-30 00:10 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【落語】春風亭小朝独演会


2007年05月27日
歌舞伎座

林家一平 「四段目」
春風亭小朝 「中村仲蔵」
林家正蔵 「お菊の皿」
春風亭小朝 「文七元結」


■四段目

一声目は、「身内の会へようこそ」。

そして、十勝沖地震の時に泊まっていたホテルの前が「東急インホテル」だったが、地震の揺れで看板の「イン」が取れて「東急ホテル」と格が上がっていた話。

円楽にコージーコーナーを差し入れしたら「いっ平くん。これは随分柔らかいお稲荷さんだねえ」と云われた話。

いっ平の大の贔屓の市川左團次の話。
大向こうで「高島屋!」と声が掛かったのを受け、「地下一階は食品売り場」と見得を切った話。

銭湯での立川談志とイラン人の心温まる交流。

と、まあ、マクラはこんなところ。お馴染みのマクラ。

四段目自体は、こう思い返してみると、、、いっ平はいつも真正面を向いている印象。なんでだろう、、、ああそうか分かった。いっ平は「キティちゃん」なんだ。高座の上のキティちゃんなんだ。

それにしても、「福助の高師直」って見てみたいな。
俳優祭で「カマ手本忠臣蔵(原作:柳家喬太郎)」をやるとしたら、もう、この配役で頼む。頼む。(と、永山会長の墓に手を合わせながら。)

■中村仲蔵

末広亭の前列でカップラーメンすする客や、笑い袋を鳴らす客の話、再び。
名代の試験の話のついでに、千秋楽を「ラク」と呼ぶ話をして、さりげなく(?)サゲの仕込み。

マクラはさておき、小朝版の中村仲蔵は煩いくらい説得力がある。煩いくらい、とは我ながら酷い言葉だけど、いや、もう、小憎らしいほどなんだ、これが。

・蕎麦屋で定九郎のモデルとなる人物に出会っても仲蔵は直接話すことはせず、気づかれないように特徴を書き留める。
・客が定九郎の工夫を褒めちぎる様子を、仲蔵ではなく、その妻が聞く。

などなど。
わたくしが物知らずなダケかもしれないけれど、仲蔵が定九郎のモデルに話しかけない演出は目新しくてビックラこきました。好きだな。

サゲ
仲蔵「女房を楽にしてやりたい」
團十郎「まだまだ楽にはならねえ。初日だ。」

■お菊の皿

今日の正蔵は、なんだか「悲壮感」が無い。ほら、あの、首に縄を括りつけられて、太鼓に合わせて踊らされてるような、あの悲壮感。いいな、今日の正蔵。

マクラは、「歌舞伎座」と「正蔵」とくれば、あれ。
「小朝が座頭の控え室を使い、いっ平が染五郎さんや勘太郎さんが使う部屋、そして私が勘三郎さんの部屋。ご縁があるようで。」これを、白々しく話せる正蔵が頼もしい。

ちなみに、お菊ちゃんを見物に行く5人の陣形は、ロマンシング・サガ2で云うところの「鳳天舞の陣」である。
そうなると、真ん中のヤツは防御力にボーナスが付くんだが、攻撃が集中するんだよな。
とか、云ってると「それは、インペリアルクロスと呼んでもいいのでは?」と突込みが入ったりするんだよな。そんな突っ込み大歓迎だ(男らしく)。

で、お菊ちゃんせんべいは、10枚入りと表示されているが、実際は9枚しか入っていないそうです。

■文七元結

お久の設定は17歳。程がいい。
程がいいけれど、そんな分別が付く年頃に、自分から吉原へ行くのがまた悲しい。自分(そして、女)の価値が分かる年頃だもんなあ。
話がズレるけれど、現代で援助交際する女の子はそこら辺の価値を、乾燥気味に、もっとダークに捕らえているのかもな。なんと云うか、股に空いてる穴に商品コード付けて管理しているカンジがする。まあ、実際はどうなのか分からんが。

文七も幾らかしっかりした若者に設定されている。
そういや、自分で「佐野槌」って名前を思い出して主に報告してたしなあ。

それにしても、小朝の、角樽を受け取る手の形がえらく綺麗だったなあ。
見てから何日か経つけれど、妙に印象に残っている。
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by bithoney | 2007-05-27 20:22 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【演芸】第300回 国立名人会


2007年05月27日
国立演芸場

神田蘭 「お富与三郎」
橘家圓太郎 「三年目」
三遊亭小円歌の三味線漫談
三遊亭圓歌 「電報違い」
一龍斎貞水 「英一蝶」
ボンボンブラザーズの曲芸
桂米丸 「ジョーズ」

ああ、やっとライスボール師匠を拝めた

■お富与三郎

「木更津は遠浅で崖など無いんです」
うははは。興の冷めるような事を云うけれど、話は話で面白い。やっぱり、いい男といい女の出てくる話はいいねえ。うん。でも、お富に対して「ゾンビのように生きていた」は台無しだなあ。いや、面白いんだけど。
しかし、赤間親分が「猫ひろし」とは、、、。わたくしがお富なら浮気しないなあ。「ねえ、親分。昇龍拳やって。昇龍拳。」って毎日ねだっちゃうなあ。 玉木宏や海老蔵の与三郎もいいけれど。

■三年目

優しい男は罪深いって話、、、なんだろうか。
奥さんの飲み薬に口直しのお菓子を添えてあげたり、後妻に気遣ってあげたりする、とてもいい旦那なんだけど、どうして、髪が生え揃うまで愛しい人の前に出て来れない女心を分かってやれんのか!と。
まあ、そんな事を云ったら落語が成り立たないのですが。

先妻も先妻だ、御高祖頭巾でもいいから出てくりゃいいじゃないか、、、とも思うけれど、それだけ「黒髪」の霊力が昔はあったって事でしょうねえ。

■小円歌

「待ってました!!」と大きな声がかかる。
そりゃ掛けたくもなるよなあ。相変わらずのいい女っぷり。
纏持ち、見世物小屋をペンペンペン。そして最後にかっぽれを踊り、また大きな声が掛かる「大当たり!!」
しかし、、、この方の踊りは隙が無いなあ。その身の回りにセンサーが張り巡らされていて、うっかり尻でも撫でようと手を伸ばしたら、けたたましいサイレンが鳴り響きそうなイメージがある。触ってみたいが、我慢しよう。

他、つれづれ
「洗濯は手洗いで。で、お手洗い行って洗ってるの、円歌師匠ったら。」
「触らしてあげるの。」

■電報違い

出てくるなり、小円歌に対して「弟子だか、妾だか」と惚けるセリフがいい。

ついでに、小さんが死んだ日の話。
「最後に寿司食って死んじゃったよ。でも、最後の日のセリフがね"明日はカツ丼喰おうかな"だったよ。」

電報違いは、なんでも大正末期の作品だそうで。昔の鉄道事情を知らないもんで「新橋の角の天麩羅屋の天久」と言われても、つい、酔っ払いのおっさんが機関車の前でレポートされているあの辺りしか思い浮かばないテイタラクだったりするのですが。でも、初めて聞いたけれど、惚けてて好きな噺だなあ。
電報が15時までなら5~6銭で、それを過ぎたら8銭、と云う価値観も、現代人から聞くとのんびりしているように思えるから不思議だ。

サゲは、旦那の遺体はどこだと尋ねられて「品川のお寺に回ってら!」

■英一蝶

「講釈は生きたオヤジのゴミ捨て場」

 柳澤騒動といえば、前に国立劇場で見た「噂音菊柳澤騒動」 "を思い出す。三幕目の第一場がその名もずばり「朝妻船遊興の場」だったりした。

ところで、一蝶が達者の頼りに松の葉を忍ばせる「ムロ鯵の開き」は、「クサヤ」の事なんでしょうか。なんか、この話を聞いていると、鼻腔がクサヤの匂いを思い出すんですよねえ。あー、喰いたい。無性にクサヤが食いたい。

■ボンボンブラザーズ

子供の頃にフランス映画を始めてみた時感じた「なんだかかっこいい」の匂いがする。

多分、「勝手にしやがれ」だったと思うんだけどなあ。なんせ、子供の頃の思い出だから曖昧。ともかく、「かっこいいな」と感じたことだけ覚えているのだけれど。

あの感覚を思い出す。

■ジョーズ

おお!ようやく米丸を拝めた。

マクラもたっぷり。「80歳過ぎたら、いきなりジョーズに入れませんよ」

その中で、ご自身の心臓病の話をする。
傘寿の祝いの会で、当のご本人がご病気で不在だったと云う寂しい出来事があったのも、ついこないだの出来事のような気がするけれど、確認してみたら一昨年の3月。そうか、そんなに経つのか。

某病院の院長は落語好きで、自ら噺をするそうな。この方がなかなか上手い、と褒める米丸。「生活がかかってないと、ゆとりがあって上手い。上手い方は淡々としている。」
で、ここの病院の退院の基準は「笑えれば退院」。なるほどなあ。

志ん生が医者の勧めで高座に戻った後、なんかの拍子で話している時に倒れこんでしまった話。
自力で起き上がれず円菊に起こされ、客がざわめく中、淡々と「そんなようなワケでぇ」の一声で場の雰囲気を戻してしまった、など。

病気の話が続く中、孫との会話がちらほら。これが可愛い。

「おじいちゃん。西郷さんは目が悪いの?(と上野の銅像を見ながら)
 だって、犬をひっぱってるよ」

「(風呂上り、裸でかけてる孫に)フルチンはだめだよ」
「古いチンはおじいちゃんだよ」

他に、円楽の話も出る。
「タクシーの運転手さんにも、円楽さんに思いとどまらせてって頼まれちゃって」
「私なんか、浅草演芸場で"厚木"って地名が出てこなくて。それがオチなのに。しょうがなくて”忘れちゃった”って素直に言ったら、とても受けた」

そして、ジョーズへ
作風は、なんとなくサトウサンペイの書く漫画っぽい懐かしさ。
映画「ジョーズ」を見ている時に発する「キャー!」と云う悲鳴がなんともキャッチーな映画好きの娘さんが、映画館の支配人に頼まれ、映画を盛り上げるサクラの悲鳴屋になる、、、って話。

なんと、サゲが3種。

パターン1)
最終日近くなると悲鳴の勢いが無くなり、ギャラが差し引かれてしまい、今までにない勢いで「キャー!」と叫ぶ

パターン2)
最終日近くなると悲鳴の勢いが無くなり、ギャラが差し引かれてしまい、「さめざめと泣き出しだ」

パターン3)
ギャラの支払いで領収書を切るから名前を教えてといわれ「サクラと申します」


ところでね.
米丸を見ているうちに、中村芝翫とダブってきたんですよ。
勧進帳で芝翫演じる牛若丸がとても若々しかったんですね。それが、なんと云うか、若作りした若さじゃなくて、「若者がそこに居る」と自然に思える佇まいで。
その時の視線で米丸を見ている自分に気づいた。

この人は「青年」なんだなあ。
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by bithoney | 2007-05-27 20:14 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【文楽】第159回文楽公演 通し狂言絵本太功記 第2部


2007年05月26日
国立劇場 小ホール
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by bithoney | 2007-05-27 12:52 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【落語】春風亭一之輔勉強会 真一文字の会


2007年05月25日
日暮里サニーホール

春風亭一之輔 「ろくろ首」 「黄金餅」 「青菜」

こないだ見た「東西若手落語家コンペティション」から気になっていた一之輔。
たっぷり3席で1,500。たった、うまい棒150本分で3席見れちゃう。うまい棒150本なんか20分もあれば完食なのに、こちらは2時間以上みっちり。お得だ。いや、それはともかくうまい棒を20分で150本食うのはどうかと思うぞ。
その上、前売りだと1,000円!ええ?うまい棒100本分になるの?

うまい棒と東京ドームで換算するのはやめなさい。むしろ分かりづらくなるから。

■ろくろ首

出番直前に帯がほどけ、衝立の陰でごそごそと結ぶ気配がする。おやおや。

幸先が悪いことが続いている、とマクラでも語る。帯が解けたり、鼻毛が飛び出ていたり。
そもそも、この会は雨に祟られているらしい。そして雨男は気絶するほど色っぽいらしいです。そうか?

あと、携帯電話の話。
特に、口演中、お客さんが切り忘れた携帯電話には困るなあ、、、と。「マクラならともかくサゲ近くで鳴っちゃうとね。 よそう、、ピロピロピロピロ(携帯の音)、夢になるといけねえ。なんてねえ。」うむ、道灌(もとい、同感。うちの辞書は"どうかん"を変換すると、まず道灌が出るのな。)
その連想からの思い出話に続く。金馬(前の。前のって<突っ込み)が「蝦蟇の油」の口上をそれはそれは見事に述べたのを喜んだお客さんが、割れんばかりの拍手を送った、、、まではいいが、それをサゲへの拍手だと勘違いした前座さんが太鼓を叩いてしまった話。

他には、焼香中にモーニング娘の着ボイスを鳴らしてしまった林家きく麿の話。矢口真里ちゃんの声で「矢口でーす。おきてーおきてー」とやってしまったそうな。
仏さんが起きたらどうするんだ。

一之輔自身のマクラのまとめは「と、云うことで。色々なものと戦いながら、噺家は生きています」

そして、ろくろ首。
時代はいつなんだろうなあ。
お嬢さん家に電気は通ってなくて、行灯を使っている。でも、冗談の端に「半ドン」なんて言葉もあったから、明治あたりなんだろうか。

登場はしないけれど、与太郎の母親が立派な人なんですよ。おじさん家に遊びに行く与太郎さんに「こざっぱりしたなり」をさせているんです。
金持ちのお嬢さんの家へ行くにも、その格好のままでOKと親戚のおじさんにお墨付きを貰えるほどのこざっぱりさ。婿入りの品定めをされに行くのにも大丈夫な格好をさせるお母さんの苦労を考えると、涙が出てくる。
祝言のご馳走を思い出す与太郎が「鯛の目玉が一番旨かった」とつぶやくシーンからも察するに、日頃から、お頭つきがあれば「目玉が旨いよ。」と、自分はさておき与太郎に旨いところを突付かせていたんだろうなあ。いいおっ母ぁだなあ。

お嬢さんが首の伸びる奇病に侵されていると聞いて「うわー、個性的!」と答える与太郎が面白い。「鈴本に体があっても、広小路亭に首がある!」って、どんだけ畳み込めば気がすむのだ、与太郎よ。

■黄金餅

「女性の出る話をやらないのは何故?」とアンケートに書かれた話がマクラ。

ネタおろし、とのこと。しかし、どこか陽気な黄金餅。
そもそも、こんなに陰気な話は無いワケですよ。
だってね、乞食坊主西念の正体は江戸の町を夜な夜な現れては黄金小判を食べて消えてしまう「黄金餅」ですよ。その謎を解くべく立ち上がったのが、我らが名探偵金山寺金兵衛!
こんな陰気で淫靡な話はありませんよって、「ソレは黄金豹だ」って早く突っ込んでくださいよ。

まあ、ともかく、そもそもは陰気な話なのですが、一之輔の黄金餅は陰気さが無い。
腹に飲み込んだ金を使うのも、供養のひとつなんじゃないかと思える。


長屋の人々が寺へ向かう時に、西念の棺桶(と申しますか菜漬の樽)の上に上ってワッショイワッショイと掛け声を出すシーンで思い出したんですが、、、
今年、こんなニュースがあったんですよ。
「神輿乗り」厳禁 三社祭、宮出し中止も検討

長屋の人々を嗜める大家さんのセリフが「そんな事すると、今年の"宮だし"はさせないよ!」だったけれど、人は何年たっても変わらないねえ。

お待ちかね、麻布までの道のり。
立て板に水か、と思いきや、つっかえて「覚えたんだよな、俺。、、、ま、いいでしょう」と、とぼける。更に「エキスパートで調べてみたら、稲荷町から銀座線で溜池山王まで行って南北線で乗り換えて麻生十番まで。」と笑いを誘い、留めに「26分、190円で行けます」。
これ、すごく好きだ。

■青菜

「兄さん、溶けてるんじゃないですか?」と言われるほど、汗っかきな体質の話から青菜。

確かに、クーラー効いてる環境で聞いてもピンと来ない話だもんなあ。うだるような暑さの中で、鯉のあらいの下に敷いた氷や、旦那さんがそよそよと送ってくれる団扇の風にハっとする話かも。

ふと気になったのは、旦那さんとその奥さんの様子。

いや、一之輔の落語がどーのこーの、ではなくてね。

青菜を用意しろ→奥さん台所へ行く→無い→旦那さんに牛若丸うんぬん、、、の順序はその通りなんだけど、どうも、青菜を用意しろと言われてから、奥さんが戻ってくるのが早過ぎる。お勝手まで行ってないんじゃないか。

そこで思ったんですが、もしかして旦那さんったら、この「牛若丸」をやりたくて、あらかじめ奥さんと話を合わせた上で、植木屋さんに声を掛けたんじゃないのか? 他の人がこの「牛若丸」をやっていたのが格好よくて真似したかったんじゃないだろうか。まんまと植木屋さんはひっかかってしまった、、と。

その見栄を思うと、着物を着込んでた奥さんも、日頃はどんな様子なんだろうな、、、と少し親近感を覚えてしまう。

他、つれづれ
「鯉の外套。鰻はズボン。あっしなんか鰻のシャッポばかり食ってる」
いや、そこが一番旨いんじゃないかな。

「ゴミ溜めにハサミムシが二匹」
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by bithoney | 2007-05-26 15:54 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【落語】第311夜 にっかん飛切落語会


2007年05月24日
イイノホール

三遊亭好二郎 「青菜」
古今亭志ん太 「やかんなめ」
桂歌丸 「紙入れ」
林家たい平 「お見立て」
立川談春 「巌流島」

冒頭に2006年度の若手落語家表彰式あり。感想はなし。

■青菜
好二郎の植木屋さんは、どこか働き者なイメージ。
タバコをふかしていた言い訳が端折られていた為でもあるが、何より好二郎のイメージとダブってそう見える。まあ、勝手なイメージなんだけど、好二郎には真面目故に時に損しちゃう好人物の匂いがする。
だから、屋敷の旦那さんへ頭を下げる時に、勢い余ってマイクに頭突きしても何だか絵になるような気がする。

夏の涼味が楽しい話でもあるが、植木屋さんが自分の長屋の様子を「化け猫が出そう」「うちはどん詰まりだから、水を撒いても風が来る頃には生ぬるくなってる」と語り、一瞬、あの夏の茹だった匂いがしてくる。そうか、これから、その夏がくるんだなあ、、、しみじみ。

この話の好きなところは、夏の涼味だけではなく、植木屋さんの人柄。いや、その時代に息づいていた「遠慮」とか「恥を感じる気持ち」と申しますか。
屋敷の縁側に腰掛けるにも「汚れちまいますから」と遠慮し、ご馳走になった後に「散らかしっぱなしで御免ください」と挨拶し、隣のおばあさんは水撒けば「すまないね。うちでやるよ。年寄りは日に当たらずに家の中に居なよ。」と労わる。

おかみさんの拵えがリアルでいいなあ。
「死んだ爺さんと同じ格好だよ。裸に浴衣で、俺の褌つけてら。」
そして、このおかみさんがヤケに素直。植木屋さんの「うちでも隠し言葉使おう」にうんうんと乗り気で承諾。その上、くそ暑い押入れの中で、なんと着物を幾重にも着込んでくれる。隙があって少し馬鹿で可愛い人。

■やかんなめ
シャドウハーツと云うプレステ用RPGがあり、そのシリーズにレギュラーとして登場する「ロジャー・ベーコン」なる人物が居て、これが志ん太にソックリなんですよ。小さくて干物みたいな爺ィ。

それはさておき、噺。
風邪気味だった話から、合薬の話に移り、やかんなめへ。
合薬の話は、癪を起こしたら下帯で胸の辺りを縛る、、、だの怪しいものが多いと云う話。
そういや、こないだ見た文楽の「絵本太功記」。局注進の段。癪ではないか、気を失った局を縛って気合を入れるシーンがあったが、あれ、もしかして、秀吉(真柴久吉)の褌か?気を失った局を見て、つい、褌をはずして巻きつけたのか?
まあ、それはいいとして。いいのか?

「物の見事につるつる(下手を見て)まだ来ていません(歌丸が)」のお約束もあり。

しかし、可内の褌長いな。6尺に5寸か。いちもつ自慢だな。着眼点はそこか?

■紙入れ
ハンサムなヤカン、こと歌丸登場
歌丸の女性って色気が無いんですよ。
あー語弊があるといけないな。「分かる人には分かる色気」なんですよ。ギラギラした、いかにもな色気が無い。「男を喰ってます」って舌なめずりを見せない女。
こういう女が一番怖いよ。怖いよ。ぶるぶる。
木の上に獲物を上げてからぴちゃぴちゃ喰うんだよ。

マクラに川柳。だんだんと色っぽいのが混じる。
「元旦や 今年もあるぞ大晦日」
「町内で知らぬは亭主ばかりなり」
「間男と亭主抜き身と抜き身なり」で、扇子を摘んでぶーらぶら
「よく聞けば 猫が水飲む音でなし」

しかしなあ、川上宗薫と宇能鴻一郎の名前、久しぶりに聞いたよ。
川上宗薫といえば、つい、萬流コピー塾の萬名「川上井宗薫」が頭に浮かんでしまうが。

ちなみに、おかみさんの決まり手は「浴びせ倒し」。
容赦ないな。

■お見立て
笑点メンバーに選ばれた理由を、円楽に「たい平君は落語ができるから」と云われた話をして、すぐにお見立てに移る。

若い衆が、お盆にお茶を3つ置いたのは何故だろう。自分と田舎者と、後は誰の分だったんだろう?

それにしても、たい平は年寄り受けがいいなあ。あの臭さもしつこさも、この会場では程がいいのかもしれない。うまいなあ。

「祝儀袋はすぐに破って捨てた方がいい」

■巌流島

時計を気にしながら登場。

岸柳島と云うほど落語落語してなく、ほどよく講談風味。だから、「巌流島」と頑なに表記したんだろうか。

それでも、
「ざまあみやがれ、宵越の天麩羅ぁぁぁ」
「なんだい、そら」
「揚げっ放し」
とお馴染みのところが入っていて嬉しい。

舞台は渡し舟の上。そこで、町人(屑屋さん)に言いがかりを付けて嬲っている侍を、うだつのあがらぬ風体の田舎侍がやり込める話、、、と言えば、何やら胸のすく気持ちがしないでも無いけれど、実際に聞いてみるとなかなかに侍の鬱屈がやるせない。
旗本の次男坊(らしい)と云う設定が更に虚しさを漂わせる。おそろしく腕の立つ侍なのに、その腕で立身できない時代。
気のふれたような言いがかりも、その時代ゆえかねえ。

対する侍は老侍では無く、「浅黄裏」と罵倒されるような田舎侍。塚原卜伝をモデルとしたタイプではなく、剣の腕前も無さげ。この設定がまたいかしている。

談春は「綺麗」だから、様子のいい侍よりも、憎らしくてたまらない侍をやる方が印象に残っていいかも。

他、もろもろ
「わたしのトリの前で歌わないで下さい~♪」
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by bithoney | 2007-05-25 09:09 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【落語】志の輔らくご21世紀は21日


2007年05月21日
新宿明治安田生命ホール

立川志の輔 「だくだく」 「水屋の富」
松元ヒロの本日のニュース
立川志の輔 「猫忠」


「え?猫忠? 大人げ無い」

とか、云わない、そこ。
朝日名人会でなんだかスイッチが入った模様。

■だくだく
弟子の出番も無く、突然登場の志の輔に一瞬ざわめく会場。おやおや、今日は3席まるまる志の輔ですか?

YMOのライブに行った感想のマクラを始める。
教授に「いつもガッテン見てます。お蔭で今日も元気です。」と挨拶された話。
高橋はスーパーマリオに似ていると云う話(いや、ルイージ顔だろう、あれは)

続けて、群馬県桐生市の大川美術館の話。
松本竣介の「街」のすばらしさを語る時、見る人の記憶を引き出すような言い方をして褒めていたが、それは志の輔らくごにも通じると思う。
「街」が気になってWebで画像を見た。なるほど、記憶から浮き上がってくる感覚がある。
その感覚は、体験した記憶だけではなくて、人から聞いた思い出話を自分なりのイメージに変換したものも含まれていたりする。そうか、他人の記憶も、そうやって繋がって思い出になるんだなあ。

そして、だくだくは「絵の先生」の存在がとても効いている。
家財道具が何1つ無いので壁に紙を貼った、、、と云う話を八五郎がすれば「そういえば、壁をこする様な音がした」と先生は答える。もちろん、これは無駄なセリフなのではなく、長屋の壁は薄くて隣の音が筒抜けである様子を説明。
この説明があるから、サゲでタイミングよく現れた先生の存在が嘘臭くなくていい。

なんと、この志の輔版「だくだく」が北海道教育大学の2005年入試問題に取り上げられたそうな。
だくだくの書き下した文の後に並んだ問題は3題、

 1)八五郎が発した「粋なやつ」とは何を指すのか
 2)最後に先生は何と云ったでしょうか。
 3)志の輔はこの話のマクラでバーチャルリアリティの話をしたが、
   そのバーチャルリアリティとは何か50字でまとめよ。

衒わずに(と云うかボンヤリと)落語を楽しんでいる者としては、こう、入試問題になる落語の姿に面食らいもするのですが、、、そうか、こうやって色々と考える人もいるのだなあ。

補足をすれば、1)の状況は、こう。盗んだつもりで色々とパントマイムしている泥棒の様子に、つい「粋なやつだなあ」と八五郎がもらしたのです。そのつぶやきの意味を答えよ、と。

そして、2)。志の輔版だくだくはサゲに工夫があり、薄い壁から八五郎と泥棒の様子を窺っていた先生が最後に飛び込んで来る、そこで

 八五郎「先生、何です?」
 先生 「助けに来た、、、つもり!」

と洒落るワケですな。その、先生の「助けに来たつもり」の部分を空欄にして、出題されたワケです。

でも、先生が飛び込んでくる気持ちがすごく分かる。
楽しそうなんだ、八五郎と泥棒の二人が。

「手裏剣を投げた、、、つもり」
「ドロンと消えた、、、つもり」
こんな会話まである。

「大リーグボール1号を投げた、、、つもり」
「オズマになって打った、、、つもり」
嘘です。これはありません。

他、つれづれ
八五郎さまのお言葉より「人間なんか、所詮、つもりみたいなもん」

■水屋の富

「totoすごいね」の一声から、マクラは「酒を張ったプールで泳ぎながら、手に持った枝豆をプププと食べたい」話。

それにしても、水屋とはなんなんだろう。
落語の仕種をみれば、肩に担いだ天秤棒の両端に桶を吊るした様子。
と、云うことは、水屋と云うには売り物は水でこの二つの桶に注いで売り歩くんだろうなあ。うわあ、そりゃ、富くじ当たるの夢見るよなあ。しんどい仕事だ。
ついでに広辞苑で「水屋」を調べてみると「飲み水を売る人」といたってシンプルな説明です。

思えば、湯水のように使うって言葉も罰当たりな話だなあ。それでも、プールのような大きい容器に水どころか酒をなみなみ蓄えてみたいと考えてしまうほど、水はたやすく手に入るものになって。
ああ、水道ってありがたい。

さておき、水屋の富。
「こっちの戸棚は本物だからな」とだくだくから続いてる冗談も嬉しい。
そして、サゲの「800両が無い!、、、これで苦労が無くなった」はホロ苦いなあ、、、。

■本日のニュース

松元ヒロにネタにして貰えるのを期待してか、アナウンサーの「ヤマグチマサル」が噛んで噛んで噛みまくる!
解禁は痒金。股間をむさぼり掻く。これは「やらなければ良かった」と後で志の輔に語ったらしい。
「輪廻」と「安部総理」のパントマイムが似ていていい。どちらもボンヤリした様子。

■猫忠

マクラは丹頂鶴。「その白さったら無い」の言葉が実にいい。

そういえば、一昨年の今頃に見た志の輔の「猫忠」のマクラは「レッサーパンダの風太くん」だったなあ。
その時の演出は特別なもので、猫の文楽人形は出てくるわ、志の輔が「寝床」の旦那よろしく義太夫をうなるわ、、、でなかなかコッテリとしたショーでございました。

斬新、って言葉も陳腐になってしまう志の輔らくごの「猫忠」。
登場する猫は二匹。
これが、また、大胆な設定なんです。
猫が、常兄ィどころかお静さんにまで化けてしまいます。静御前ですよ、静御前。

これがお芝居ならば「なんと、忠信どころか静御前まで狐!!」と騒然です。
この設定で、吉野山の一幕を見てみたい気もしますねえ。一対のお雛様のように並ぶ忠信と静御前が、お互いの毛づくろいをするように、襟元のあたりを叩いたり簪を直してあげていたら、微笑ましい。

常兄ィの風邪の原因も、これらの妖力が関係による体の不調だった、、、と、細かい設定を付けているところがまた憎い。

ところで、常と静に化けた猫たちが、口でぬるました刺身を食わせているところを見たヤツラが
「うまそう」
と身もだえする気持ち、、、あれ、分かるなあ。
ビビンバを匙で掻き混ぜず、そのまま瀧川クリステルに一匙頬張らせて咀嚼したものを吐き出させて喰いたいもんな。な。(と、同意を求めても困るだろう、君たち)
瀧川クリステルなら、噛み切れなかったミノでもいいよ。食いたいよ。な。(と、同意を求められても困るだろう、君たち)

サゲもまた独特「(猫忠と猫静が)その前にお願い。三味線屋には告げ口しないで下さい。」


最後に、志の輔ゆかたを着た談春が登場。

に、似合わない。サイズが合わない。談春、その浴衣似合わない。恐ろしく似合わない。
お客さんの頭上に「ガビーン」と云う擬音が浮いて出たのを、わたくしは見逃さなかった。

浴衣を着ていると云うよりも、山盛りの飯を味付け海苔で巻いたカンジ。具沢山の生春巻き状態。(うまいね、談春の春と、春巻きの春をかけたね!<上手いって言うほどか、バカ)
告知、来年のパルコは3ヶ月公演です。嘘です。死にます。それでなくても一昨年は秋ごろまで死相が顔に出ていたのに。
「志の輔アニさんは、年々若くなる」の世辞も上手で、談春はえらいなあ。こういうとこも好き。
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by bithoney | 2007-05-22 08:54 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

【落語】第1回 白談春


2007年05月20日
紀伊國屋サザンシアター

Dr.ハルの特別講義
立川談春 「文違い」 「紺屋高尾」

■特別講義
白衣姿のDr.ハル登場。靴下。そして、スリッパ。こちらも、色物じゃなくてドクターとしてお迎えせねば。
本人が言うには「ケーシー高峰を尊敬する余り、このいでたちです」とおどけていましたが、ちらりと語った数学への思いがふつふつと熱いのに驚きました。そういう経歴の方だったんですか?知らなんだ。

遊郭にまつわる都都逸を並べての講義。ドクターの手には、チラシの裏に書かれたアンチョコが。環境にやさしい立川一門。
同じ「まこと」でも、都都逸によって(状況や思いによって)「真実」と書いてそう読ませたり、「真心」だったり、「誠意」だったり。

宮戸川のばーさんのモデルの話まで出る。いやですよ、おじいさん、若い者に刺激を受けちゃって。川渡れババァ!マリリンに会いたい(それは海を渡る犬っころだ)

千住がせんじゅでもせんじでも、女郎がじょろうでもじょろでも、どちらでもいいなあ、、、が感想。でも、「せんじ」と云うなら「じょろ」と云い、「せんじゅ」と云いたいなら「じょろう」とおっしゃっていただきたい。ともかく、アナウンサーと談春はそう住分ければよろしい。うん。

■文違い

自分を苦界に沈めた父親が金をせびりにくる、、、が金の無心のイイワケになっていたので思い出したのが岡本綺堂の「鳥辺山心中」。これを歌舞伎で見たことがあって、こちらは女郎とその父親の仲が良く、父親が女郎の部屋まで遊びにくるシーンがあって、その明るさと云うかアッケラカンさに驚いたことがある。
岡本綺堂は昼日中に父親が遊びに来る様子で明るい。一方、この文違いは薄暗い部屋の中で、行灯のぼんやりとした光と、男と女が額がくっつきそうになるほど近づいて話している影が揺らいでいる。
談春の言うとおり、この話は「暗さ」がキモだと思う。確かに、蛍光灯の下でやりとりされているのは想像しづらい。滑稽なやりとりが続くが、この薄暗さの中で繰り広げられていると思うとなかなか緊迫した空気を感じる。

■紺屋高尾
冒頭の講義でも「落語のメロディが崩れても、今日(の紺屋高尾)は臭くやりたい。」と云ってた通り、臭い。実に臭い。そこがいい。

二葉亭四迷が「I Love You」を「あなたとなら、死んでもいい」と訳し、つまりは明治以前に愛と言う言葉がなかった話から紺屋高尾に入る。いいなあ、この臭さ。
臭い(胸キュン)ポイントは他にもいくつか
 ・花魁道中。目が合って、ニコっと笑ってくれた高尾の行為を「あの人親切な人ですね」と云う久蔵。
 ・来年3月15日、、、で羽織を脱ぐ
 ・高尾が約束どおり来た知らせに飛んでくる久蔵。勢い余って倒れて手がかかるところに高尾の帯。(見上げる久蔵の顔を想像させてキュン)
 ・忘れちゃいけない「久さん、、、元気?」

何よりの胸キュンポイントはこれ!
 ・久蔵と結ばれ、店を手伝う高尾の指先も青く染まっている


ところで、親方に「薬で病人助ける医者はいくらでもいるけれど、女郎で治せるのは藪井先生だけだ」言われる竹庵先生のお住まいが於玉ヶ池と言うのもなかなか上手く出来てるなあ。
考えてみれば、凄腕の心理カウンセラーなワケですよね?竹庵先生は。お玉さんも、身を投げた当時、こんな人がそばにいればねえ、、、
と、ここまで書いて気づいたけど、実際にカウンセリングしたのは親方夫妻なんだよな。竹庵先生は連れてったダケだもんな。でも、幾ら運が良かったとは言え、久蔵に高尾を会わせてしまうんだから、すごい人って云えば確かにすごい人。

他、つれづれ

 おかみさん「初めて惚れた女と一緒になれたかい?」
 親方 「答えづらいねどうも」

 久蔵「高尾買いたいんです」
 親方「タカを飼う?懐かないんだよ。メジロか十姉妹にしろ」


 吉原へ行く前に
 親方「しくじるなよ」 ※ふられるなよ、の言い間違いか?
 久蔵「大丈夫ですよ、いい天気だし」

 吉原から戻り
 親方「ふられたろ」
 久蔵「いや、いい天気でした」
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by bithoney | 2007-05-21 09:11 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜

泣くが嫌さに笑い候。
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