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。はにかむ



【落語】柳家喬太郎落語 アナザーサイド Vol.1


2007年08月17日
お江戸日本橋亭

柳家小ぞう 「真田小僧」
柳家喬太郎 「東京タワーラブストーリー」
寒空はだか
柳家喬太郎 「赤い部屋」 「孫帰る」

さー、今回のレポートもなげーぞ。今のうちに便所行っとけ。


開演前のアナウンスより
「喬太郎より早くお越しいただき、ありがとうございます。
 (中略)
 では、喬太郎到着まで暫くお待ち下さい。」
笑いで誤魔化していたけれど、楽屋のヒヤヒヤしている様子がそこはかとなく伝わる。こういう時、お客さんは鷹揚に"承知承知"とくすくす笑って和やかな空気。今日のお客さんもいい雰囲気の人が集まってて嬉しい。

■真田小僧

"型"と云うのは凄まじいものだなぁ。
高座が低く客の目線を測り切れないためか、マクラの時に顎を突き出し喋っていたのをハラハラと見ていたが、真田小僧が始まるといつの間にか顎が引かれて修正されていた。

途中痞えるも、「えー、それほど子供さんと云うのは、、、、ビックリしたー、、、えっと何でしたっけ?」から、すんなり話しに戻る。度胸がいいなぁ。


■東京タワーラブストーリー(武藤直樹作)

出囃子は"東京ホテトル音頭"。微かに頭を振りながら拍子を取るお客さんがちらほら。あんたも好きねー(私も好きだけどさ)。

口を開いてまず「よく、意図の分からない会」と煙に巻き「ぶっちゃけて云えば(本日の会を録音して)CDを出しましょうと云う話です」と説明。なんでも、本日の演目はすべて(喬太郎以外の人が書いた)原作付きの話で構成しているそうな。乱歩の遺族も了承済(ご子息の平井隆太郎が客席に居たそうです。ふふふ、武藤直樹も客席に居たらしい)。

  ※とは、云うものの。録音してCDを出すといいながら、録画の機材も搬入されて
   いたので、この時点では本当に「意図の分からない」不気味な様子でした。

録音と云うことで、「多分、そのうち救急車が通りますよ」と喬太郎が冗談を言ってる矢先に"チュイーン"と回転音が聞こえてくる。「言ってるそばから電動のこぎりですよー、やってくれますねぇ。」
さもありなんさもありなん。

さて、本編。ラッパ屋の武藤直樹原作。

ネットで知り合った若い女性が初めて上京すると言うので、エスコート役を頼れた中年男は張り切る。それを職場の先輩に相談するシーンで、先輩は「おしゃれな町、赤羽」から始まり、東京に僅かばかりに残された東京らしい東京を並べだすところが面白い。
「王子、、、北区を馬鹿にするな。"来たく"なる町北区だぞ。あと、志村坂上。方南町。」
「方南町?乗り換え間違えて行くところですよ!」

この話は、しみじみ思えば「東京の鎮魂歌」なのかもしれないなぁ。地方出身者の植民地となり、勝手なイメージを塗り固められてしまった東京の。地方から来たリカちゃんが東京タワーの天辺から見下ろしているさなか、東京人は地べたを擦って昔を懐かしんでいる、、、そんな話のような気もする。

さておき、方南町は、いいところですよ。地下鉄出口の立ち食い蕎麦の出汁の匂いがたまらないですよ(方南町にヤケに詳しいわたくし)

ところで、"スイカのカードで改札を通る"仕草は、手ぬぐいをポンと当てるそぶりをしてから、両手の手のひらを影絵のハトのように軽くはためかす動き。あはは、確かに自動改札に見える。

そして、意外にマクアックなリカちゃん。

その1
男「(愛宕山の幇間気取りで東京タワーの階段を昇る)すちゃらかちゃんちゃん、すちゃらかちゃん」
リカ「(すかさず)よーよー、古今亭。」

その2
男「これ以上は(東京タワーは)昇れないよ、キングコングじゃないんだから」
リカ「キングコングは東京タワーには登りません。それを云うならモスラ。」

!!!流石は喬太郎、細かい。
マニアックなようで67年東映の"キングコングの逆襲"が出てこないツメの甘さが、やっぱり女の子。(モスラは、まぁ、キングコングの逆襲に比べたら認知度が高いってことで)
とは云え、"ウッホウホウホウッホッホ(中略)キングコングは友達サァ~♪"とアニメ版のキングコングを歌いだすようなマニアなリカちゃんも見てみたい気もする。


他、つれづれ

「貧民窟、、、、ここ、(CDでは)カットでしょうねぇ。」

喬太郎風俗一口メモ
「韓国エステの受付に貼ってあるのはタレントの写真で、入ってみると違う人が出てくるぞ。」

「デートするんですよ」
「ちょこざいな。親父さんとか?」
「それじゃ、介護ですよ」


■寒空はだか

「例えるならば、私は方南町」

あ、云われてみれば、方南町っぽい。

さて、本日の曲目と備忘

・心に森本レオを持て

 てんてーん、キリキリ(調律)

・僕の彼女は狼少女

 二番はテロリストに育てられた彼女、三番はマジシャンに育てられた彼女。

・防人の歌~アルプスに派遣されましたVer.)

・登るアホウに見るアホウ(山男の歌)

 「今日は兄貴の命日です。兄貴は高見山に登り、五合目あたりで吊り出しされました。」
 山頂には有閑マダムが居ます。そこを目指して男達は登ります。「や・や・山男♪ や・間男♪」
 別名「とざんかの宿」(箪笥を肩に乗せながら歌うこと)

・できるかなテーマソング(松鶴家千とせVer.)

 小林サッチモ

・召使いサリー

 「よっちゃん、私、召使いだったの」

・東京タワーの歌

 二番の歌詞は札幌テレビ塔。「白い恋人売ってなかっタワー♪」 

他、つれづれ
「お嬢ちゃん、何処で焼いてきたの?」「バリ島」「熊谷でいいだろう」 「、、、はい、どうみても焼く(厄)そこそこ」
ああ、文字にすると面白さが伝わらない。


■赤い部屋(江戸川乱歩作)

学校公演へ行った先の宿で、有線の落語を聴きまくっていた話。
どっかで聴いたことあるなぁと思ったら「すみれ荘」だった、とか、ソーセージおかずにたらふく飯を食った幸せな朝、部屋に帰ってみると三遊亭白鳥の話をやってて台無しだった、とか。楽しい話だけれど、落語を聴きまくっている様子がどこか鬼。"好き"でいるエネルギーの消費ってすごいものだけど。その燃料が尽きないんだから、喬太郎は恐ろしい人だ。

あくび指南から始まるところが、また、いい。
暢気でひたすらに可笑しみのあるセリフ「退屈で、退屈で、、、ふわぁぁぁぁぁ。」が、一転して赤い部屋に溶けてゆく。
そしてTは、冒頭でお大尽たちにあくび指南を聞かせていた落語家と云う設定。

この、原作と違う設定が効いてるラスト。Tが原作と同じ立場(秘密クラブの新会員)だとしたら中途半端に感じてしまうけれど、この設定でこのラストなら納得。(などと語りながらも、原作の赤い部屋の舞台の部屋が本当に赤かったどうかもウロ覚えなんですが、、、うん、読み返そうっと。)

按摩が、マンホールの蓋がずれて落とし穴になっている"左"に寄って歩いてゆく箇所を、"右"といい間違え、会場がもやもやとした雰囲気に。喬太郎、すかさず「間違えましたね」と修正。録音は魔物が潜んでいる。グレムリンのいたずら。


■孫帰る(ほりうちりょうこ作)

カルチャーセンターで落語創作を教えていた時の、生徒さんの作品らしい。しかし、連絡先が不明で今回了解が取れなかったとのこと。

しかし、その「孫帰る」に入るまでのマクラが長い。
なんせ、「東京タワーラブストーリー」の一部取り直しと、なんと、先日の「ライブ@ライズ第3夜 漫才しろ!ますだおかだ ~あの人が台本書きました~」のWOWOW放映用補足録画あり。

先ほどの東京タワーラブストーリーで、「私の母は東京に殺されたの」「え?死んだの?」「いいえ、比喩」と云う仕込みの会話を入れ忘れたので、ここで話す。そして、後で繋げてCDにするそうな。

そして、「ライブ@ライズ第3夜 漫才しろ!ますだおかだ ~あの人が台本書きました~」の方も、似たような事情。とは云え、少し複雑。
この「漫才しろ!ますだおかだ」は、日ごろ自らが台本を書いている"ますだおかだ"が様々な著名人に台本を依頼し、それをライブで披露すると云った企画。台本の執筆者の中に、柳家太郎が含まれて居たのです。
大まかなスジは、《石鹸で滑った拍子で江戸時代にタイムスリップした"ますだおかだ"が、新撰組の屯所で漫才をするハメとなった》と言うもの。
ライブで見た喬太郎脚本の漫才のオチは《新撰組の沖田は"おかだ"の(寒い)ギャグがツボだったらしく、爆笑した勢いで激しく吐血する。それを見た"ますだ"が「沖田の死因はお前やってんなぁ」で暗転》だったのですが、これが実は間違い。実は、この後、原稿にして2枚ほどのボリュームでラストが練り上げられていたのだが、Fax送信ミスで事務所に届いて居なかったそうな。
打ち上げで喬太郎が「(ラスト2枚を)カットしたんですねぇ」とやんわり尋ねみたところ、関係者がキョトンとしている。確認してみたら、このFax送信ミスが発覚したとのこと。

そんなこんなで、"漫才しろ!ますだおかだ"放映時にこのマクラ(説明)を挿し込むため、WOWOWのカメラが入っていた。

そして、本当のオチは"新撰組の前での漫才が夢だった"と云うすごい展開。ある意味、赤い部屋の原作級のどんでん返し(そうか?)そして、夢からさめた"ますだおかだ"がボヤきながら舞台へと向かう「まさか俺達が18世紀のフランスにタイムスリップするなんてなぁ」

そして、この漫才の本当のタイトルが分かりました。「壬生の血煙り」だそうです。へー。


いい加減、"孫帰る"の話を書こうっと。

一昨年聞いた時は、箪笥の上から降りれなくなったおじいちゃんに椅子を孫が持ってくる下りがあり、"椅子は持てるのに、なんでおじいちゃんの肩を叩こうとするとすり抜けてしまうの?"と、幽霊になった孫の悲しさにケチが付いてしまったのだけど、今回は孫の見てる前で「トウ!」と気合を発し飛び降りるシーンに差し替わっていました。この、孫の前でおどけて元気に振舞うおじいちゃんの姿がラストのホロ苦さに効いてくる。
(ちなみに、前回聞いた時もおじいちゃんが「楽屋でもタバコが吸えなくなった」と愚痴っていた。)

前にも、感じたけれど、清原なつのに漫画にして貰いたいようなホロ苦ファンタジー。「ゴジラサンド日和」のおじいちゃんのイメージ。

他、つれづれ
・喬太郎が林家しゅう平に書いた新作落語『宝塚忍法帖』
「忍法ベルサイユの薔薇!」

・口演にあたって円丈の許可は既にとってある『かわいそうなうんこに香典を』
 (扇辰との二人会あたりでやってくれそうな予感もあるんだが、無理でしょうか)


カーテンコールあり。あれは、ありか?
もう、狂ったように幕が開いたり閉まったり。故障中だそうな。
緞帳の内側の定式幕を、喬太郎が手動で閉めて終了~。
by bithoney | 2007-08-18 00:56 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜
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