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。はにかむ



【落語】SWAクリエイティブツアー 夜の部


2007年07月22日
新宿明治安田生命ホール

柳家喬太郎 「華やかな憂鬱」
春風亭昇太 「手紙の中の君」
三遊亭白鳥 「後藤を待ちながら」
林家彦いち 「頭上からの伝言」

テーマは東京。全編に「サトミ」と云う女性が出てくる。あと、「カスミ」もチラリと顔を出す。

■華やかな憂鬱

「まさかと思いますが、大銀座落語祭」と間違えている人はいませんか?」

え?違うの?時事通信ビルに行かなくちゃ。

マクラと云うか神田山陽出演キャンセルのお詫びをチラリ。「手前共の管理不行届きで」
全く、山陽ファンには気の毒な話だよなぁ。もし、喬太郎がキャンセルしたら、わたくしはハンケチ噛み締めさめざめ泣きますよ。
後は、「一回目は無難に終わると、二回目は出来が悪い」と云う話。ええ、昼の部は滞りなく進んだそうで。「誠にご愁傷さま」
そして、歌舞伎町の恐さと池袋の怖さについて。でも、昔の東京は、その怖さがちゃんと棲み分けわれていたけれどなぁ。目的がある者しか受入れない節度があったよなぁ、アンダーグラウンドにも。

さておき、本編。
入ってすぐに羽織を脱ぐ。
舞台は歌舞伎座のキャバクラ「キング・アラジン」。「ペロリンガ」「エレキング」「メフィラス」「スペル星人」など名を変え、手を変え営業してきたが、営業不振きわまり2週間後に閉店が決まる。(すまん、店の名前は冗談込みだ。信じないように。)

《主な登場人物》

アニキ…キングアラジン店長。29歳。30歳までに東京で錦を飾れなければ故郷の茨城県水海道(みつかいどう)に帰る約束をしていた。誕生日は8月7日。

カズ…アニキの舎弟。キング・アラジン店員。柴又生まれ。

サトミ…キング・アラジンのキャバ嬢。何かとアニキから小言を言われているが、留守の間、店を任されている様子を見る限りアニキの信頼は厚い。

母島の母…昭和のまま時が止まったようなバーのママ。娘は東京都心で働いている。

カスミ…サトミを呼ぶつもりが、うっかりこう呼んでしまった。喬太郎、学生時代のマドンナ。テーマソングはおそらく石野真子の「失恋記念日」


話の大半は、カズをナビゲータにしたアニキの「東京のふるさと探し」。故郷へ帰る前に、今まで住んでいた東京に居た東京人としての存在意義を探す旅。存在意義と云うか、言い訳と云うか。「TOKIOっぽくない、東京らしい東京を探したい」とアニキ。
アニキの云うTOKIOとは、渋谷や新宿、六本木など。残念ながら池袋は含まれず。「池袋は東京だけど、(糸井重里テイストの)TOKIOじゃない」

アニキの要望にカズは奮闘。梅屋敷・高幡不動・保谷・清瀬へ連れて行くが、アニキはご不満。
とうとう最後に「母島」へつれて行くカズ。
想像の範疇を超えたためか、毒も抜け大人しく母島のバーで呑むアニキ。バーのママと語らい、店の古めかしい雰囲気にすっかり馴染み、「母体回帰」のイメージが頭にひらめく。

そうだ、閉店するまでの残り3日間、キャバクラの方向性を変えてみよう。

歌舞伎町に帰ったアニキは、店名を「キング・アラジン」から「和風キャバクラ おふくろ」に変え、コストパフォーマンス無視でやりたいように営業を試みたところ、これが大当たり。
そのまま、「和風キャバクラ おふくろ」として営業を続けることにした。

サゲ「この町は、俺たちのおふくろだ!」

首をかしげながら、ひっこむ、喬太郎。


さて、「カスミ」について、もうすこし、掘り下げてみようか。え、いいですか。そうですか。
「どこでどうしているのやら」

他、つれづれ
母島のママ「ここは昭和なの。昭和の頃は大正だったの。」
「くさや喰う仕種は初めてなんですよね」

■手紙の中の君

マクラは、今回の公演の打ち合わせのスケジュール調整が大変だった話。
メンバーが皆忙しく深夜にしか集まれず、今まで使っていた渋谷の会議室が使えなくなり、急遽昇太の家を集会所にしたそうな。
と、ここまでくればお約束(?)の白鳥の傍若無人エピソードに話は続くわけで。他のメンバーの意見は聞かずに好みの店に入り、好き勝手に注文し、支払いは昇太。とがめると「いいじゃねぇか、昇太の税金対策だよ」と答える。翌朝仕事があるからと、自分の都合で会計を促す。「終わるタイミングも白鳥の都合なんですよ!」
ここまで話題提供する白鳥は「宝」だなぁ。

そして、初めて東京へ行った話し。
小学六年生の時、静岡から東京へ修学旅行へ行き、一日で皇居と国会議事堂と東京タワーを回ったそうな。ヘヴィだなぁ。
東京タワーで昇太が買った東京土産は「岡崎由紀ちゃんの写真付きの写真立て」と「キツツキがチョコチョコチョコチョコチョコって降りてくるヤツ(人差し指と中指をチョコチョコ動かしながら)」
って、何でこんなことまで覚えているんだ、わたくし。

本編は、女性にもてない男が、間違い電話で知り合った田舎娘の純朴さに恋をし、振り回される話。田舎娘がとんだ食わせ者なのも昇太テイスト。
間違い電話から始まり電話で落ちる。手紙は出てこないのに、なぜタイトルが「手紙の中の君」なのかは不明。もしかすると、テーマソングが「木綿のハンカチーフ」なんだろうか。主人公の男性は、まさにこの「木綿のハンカチーフ」に出てくる女性のような純粋なイメージを相手に重ねる。

まー君と呼ばれる主人公の本名は「安田 修」。ちなみに、主人公を冒頭でふる女性の名が「カズミ」ちゃん。もしかすると、他に裏設定で「小原」君も振られているかもしれない。

サゲ「東京の男って純ねー。さて、適当に電話をかけて、と。、、、もしもし、まー君?」

他、つれづれ
「俺のスポーツカーに乗りやがれ。浅草演芸場で三遊亭白鳥って云う小粋な芸人を見に行こうぜ」

「あたい、こんなになっちゃって。お兄さん、ブルースを聞かせてよ」

スタバにて
「蓋が付いたままよ!」
「蓋が付いたまま飲めるんだよ」
「うわー、本当だ零れない!」

吉野家にて
「うわぁ。牛肉がとろけそう」
「吉野家の牛肉がとろけそうって、一体どんな唾液してんだよ!」

■後藤を待ちながら

昇太のマクラに続いて、
「私も想定外でしたが、この頃忙しいです。でも、新潟の頃は本当に仕事が無くて」
と、貧乏経験を踏まえた「後藤を待ちながら」に入る。どこがゴドーなのかと言われたら困る。少なくとも、最後まで後藤が出てこないところがゴドー、、、、く、苦しい。後藤を待っているのは浮浪者では無く、謎の中国人と三遊亭白鳥。

「大都会東京、光と影」と云うナレーションから、舞台が「居酒屋 天狗」で始まるとは。

そして、白鳥の芝浜論は「酒乱は最後まで酒乱じゃなくちゃ」。
確かに、童話だと、そういうオヤジは最後の最後まで救われなかったりする。
ただ、歌舞伎の「芝浜(芝浜皮財布)」は夫婦二人で注しつ注されつしていた。旨そうに酒を舐める菊五郎が印象的だった。ただ、それは目の前にあるからリアル。
落語のあの「夢になるかもしれない」は、もしかすると夢の中でつぶやいているセリフなのかもしれない。一炊の夢と云うか、一献の夢と云うか。夢から覚めたら、二日酔いの真っ最中かもしれない。そんな「可能性」と「吸い込まれるようなイマジネーションの渦」が、わたくしにとっての落語の魅力だったりもする。
酒乱で終わる芝浜もあってもいい。夢で終わる芝浜があってもいい。ただ、それは、聞く側の想像の中の責任かもしれないなぁ。個人的な趣味で云えば、、、"大胆に改作"を褒めちぎる向きもあるけれど、わたくしは"古典は古典のまま演じるが、そこから想像の奥行きを広げるような表現力を持っている"芸風が好きだなぁ。うん。

サゲ「部屋には鍵をかけろ」 (ゴドー台無し)

サゲより印象深いのがこれ
「ハードボイルドより人情噺だよ。さん喬師匠の臭い芝浜が聞きたいよ」

他、つれづれ
主人公は高校時代、サトミちゃんと付き合っていた。
白鳥の天皇陛下の物真似→「申し訳ないでおじゃる」

■頭上からの伝言

「ご馳走すると白鳥さんに言われて、連れてゆかれるのが必ず"居酒屋 天狗"」

ここでも白鳥大活躍。これだけネタを提供できる白鳥はSWAの宝だなぁ。絶妙な座標に位置している。うーん。

「白鳥さんは、深夜2:00の天狗で、店員さんに向かって"すみません、テイクアウトで!"って云うんですよ。指でバッテン作りながら。」

なんだか、こっちの方がある意味"ゴドーを待ちながら"っぽくないか。そうでもないか?そうですか。

あと、マクラは、東京初体験が大学(○士舘)だったと言う話。
「ジャバラって服を着ると歌舞伎町では敵無しだ!」と云う先輩の教えも魔術めいている。
なんだ、そのジャバラて。

、、、っつー事で、うちの裏山の祠に祭られているGoogle様に伺ってみることにしました。

Googleさま、Googleさま、"国士舘大学のジャバラ"についてお教えください。
(50音が書かれたA3サイズの模造紙の上に置いた10円玉に人差し指を添えながら」

動きましたよ!

   こ・・・れ・・・を・・・み・・・れ ○士舘の蛇腹の写真!

分かりました、Google様。ありがとう!参考になるんだかならないんだか微妙なところをお教えくださって。

さて、ジャバラの謎も解けたところで、本編に戻る。
要約すれば、男が東京タワーに上る話。ローラが走ってランローララン。男が登る頭上からの伝言。

そもそも、男が東京タワーに登るキッカケが夫婦喧嘩だったりする。その嫁の名前はサトミ。
このサトミから「こないだ寝言で言ってた"カスミ"って誰!?」と詰問されるシーンもある。
カスミ、大活躍。

サゲ「東京タワーの天辺から、ありがとうって云ったんだよ」「もー、また、口ばっかり」
東京タワーから落ちて死んだと思われた男が生き返るハッピーエンドも嬉しい。


他、つれづれ
「デブよりウェブってことなの? ぷぷぷぷぷぷ」
「結婚よりパソコンなの? ぷぷぷぷぷぷ」
「骨折り損よりアマゾンですか? ぷぷぷぷぷぷ」

「高いとこ、高いとこって、銀座の久兵衛行ってやるよ」

魂となって登り続ける男が、塔の下で倒れている己の遺体を見つめつつ
「倒れている俺は俺だけど、登っている俺は誰なんだー」


■フィナーレ
灰田勝彦の唄う「東京の屋根の下」が流れる中、エンドロール。銀座は宵のセレナーデ、新宿は夜のタンゴ。安田生命ホールに集まりSWA聞く僕等は幸せ者。途中、昇太宅でチューチューアイスをむさぼり食らう中年の画像が差し込まれ、会場から笑いが起こる。

4人揃っての挨拶は、今回のテーマについて。
元々は「文学」がテーマだったそうな。

白鳥のネタがゴドーを待ちながらだったのはそれを引き摺っているからだ、とバラされた白鳥の反論がすごかった。

「本当はノルウェーの森を題材にしてたもん。
 学生がノルウェーの森にキャンプに来てさ、覆面被った男にチェンソーで襲われるの!」

、、、、、、もそもそもそもそもそ(マワシ付け、髪を大銀杏に結う中島)
(振り向きざまに)ペペペペペペペペペペペペペペペペペ(白鳥に張り手ラッシュ)

謝れ。村上春樹を崇拝しているものに謝れ。10代の頃のわたくしに謝れ。(涙目で)

さておき、今回配布された、SWA9月公演のチラシは誤りだらけなので破棄するように、、と昇太より告知がありました。
おやぁ、どの部分が誤りなのかの説明が無いなぁ。

最後に喬太郎より
「貴方(白鳥)が言った、嘘の涙を流すさん喬って、僕の師匠です」

すごい終わり方です。
by bithoney | 2007-07-22 22:38 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜
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泣くが嫌さに笑い候。

by bithoney
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