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【歌舞伎】松竹百十周年記念十八代目中村勘三郎襲名披露 四月大歌舞伎 昼の部

ご説明:
カテゴリ「芝居浄瑠璃芋蛸南瓜」では天本の観劇メモをまとめております。
ネタバレもあるのでご注意下さい。
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■データ
松竹百十周年記念十八代目中村勘三郎襲名披露 四月大歌舞伎 昼の部
日付:2005年04月24日
場所:歌舞伎座・東銀座

  そして演目は、
  「ひらかな盛衰記」ひらかなせいすいき
  「京鹿子娘道成寺」きょうかのこむすめどうじょうじ
  「与話情浮名横櫛」 よわなさけうきなのよこぐし



あらすじは歌舞伎座サイトの四月公演ページをご覧いただくとして、
わたくしの雑感をば。

ひらかな盛衰記 源太勘當の段…
千鳥を演じる中村芝のぶ丈を楽しみにしていたのです、
期待を裏切らない芝のぶ丈の魔力を堪能。

実は、登場したばかりの芝のぶ丈がさえなかったンです。
いつものふんわりと花が香るような美しさが曇っている。
千鳥に横恋慕している梶原平次(市川海老蔵丈)とのやりとりは
美しいけれど、それは形とかお顔の端整さで感じる美しさ。
あらん、どうしたのかしら?と首を捻っていると、
恋人である主役の梶原源太(中村勘太郎丈)が登場。
そして源太に茶を出すために千鳥が再登場したとたん、
さっきの曇りっぷりと打って変わり、芝のぶ丈の美しさの輝きようたるや。
恋人の源太の傍で匂うように佇む千鳥。
この千鳥は心底源太に惚れている。
す、すごいな、プロって。

勘太郎丈の源太も麗しい。千鳥と並べば正に一対のお雛様。
紅白の梅を刺した烏帽子が映える映える。
声の音量がいい海老蔵丈相手のセリフも綺麗。
(声を大きくしているってよりも、張りの調整が絶妙なカンジ)
勘太郎丈、ますます目が離せないなあ。
海老蔵丈も甘えん坊で残酷な次男坊って役がはまってました。

でも、今回、1番痺れたのは源太と平次の母延寿役の片岡秀太郎丈。
母の愛情が深いンです。
そりゃあね、政岡(伽羅先代萩)のような
「時代がそうさせてしまった」哀しい母子の物語も(物語として)いいけれど、
息子の命を救う母の話しって観ていて嬉しい。心が救われる。

そして、片岡秀太郎丈の延寿が舞台に居ると、絵が美しい。
絵だけじゃなくて、図形としても美しい。
舞台中央の奥に延寿が居て、
前方上手に千鳥、下手に平次、そして中央(でもやや千鳥寄り)に源太。
つまり、延寿を扇の軸(すんません、扇の部位の名が分からない)とすると、
登場人物の配置が扇を広げて少しだけ傾けて置いたような配列なんです。
それがまた美しいったら。
軸の延寿が美しいから決まるんだろうなあ。

京鹿子娘道成寺  道行より押戻しまで…
舞の途中、ギラリと鐘を見つめる勘三郎丈の目の冷たさにゾクゾクします。
夜の部の「籠釣瓶花街酔醒」の次郎左衛門がラストで見せる狂気の視線もゾクゾクしたなあ。
勘三郎丈って、チャーミングなところが実にステキなんだけど、
(フレッド・アステアと勘三郎は最高にチャーミングな人だと思う)
それだけに、人が人の心を無くしてしまう恐ろしさや、
人ではない魔の冷たさを見せてくれるとたまらない。
次は何を見せてくれるんだろうと楽しみで仕方なくなる。

そして、贅沢な所化の配役。芝翫丈に勘太郎丈に海老蔵丈。
前の席に座っていたお嬢さん
(藤の花を散らしたお着物がとてもお似合いでしたよ)は
海老蔵丈の贔屓らしく、身もだえしてオペラグラスを握ってらっしゃいました。
うふふ。

途中で手拭いを投げてくれるんだけど、流石に3階席まで届かないよなあ。ちぇ。
(でも、以前、当代の児太郎ちゃんが3階まで投げてた記憶が、、、
すごい肩ねえ、児太郎ちゃんったら)

与話情浮名横櫛 木更津海岸見染の場…
徒な姿の洗い髪、死んだはずだよ、お富さん(セロテープで春日八郎の顔真似で)。
っつーワケでお富さんの登場です。

一幕目、木更津の浜辺らしく舞台の上に本物の貝殻が散らしてあって、
それを役者さんが拾ったりしている。いい雰囲気。

湯上りに化粧するお富(坂東玉三郎丈)の仕草にハアハア。
(電車の中で白粉はたいたりマスカラこってりつけているおねーちゃんとの違いってなんだろうなあ。)
白粉にちょろちょろと水を差し、刷毛で白粉を練って、緩めた胸元にまず白粉を塗る。
デコルテから化粧、、うーん、女として勉強になるなあ。
刷毛を持つ指先も猫が長い尻尾をくねらしているようで色っぽいんだよなあ。
で、タイトルにもなっている「横櫛」がまたいい。
耳の横でゆるく挿してて、わたくしが男だったら「おや、ねえさん櫛が落ちそうですよ」とちょっかい出しちゃうね。
そんないい塩梅の隙のあるいい女。

しかし、夜の部の「籠釣瓶花街酔醒」といい、この「与話情浮名横櫛」といい、
仁左衛門玉三郎コンビに鼻血でまくり。

ところで、あの洗い髪のカツラってどうなってるんだろう。
すごい洗い立ての水がしたたりそうな艶があって、
こしのある豊かな髪が川のようにうねっていて。
by bithoney | 2005-04-25 23:36 | :芝居浄瑠璃芋蛸南瓜
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